私は昔から本や漫画、テレビや映画などに登場する「名台詞」を日記に書き留めておくようにしていました。 中には「名台詞」じゃないけども、当時私が気になった「雑学」も入っています。 と言うワケで、今回も昔の日記からそれらを抜き出してご紹介するのであります。 (今回は2004年頃の日記からの抜粋です) コメントはその当時のモノ。 ※印付きのコメントは、今の私の補足説明です。 またまた前後の脈略無くズラズラズラと並べてみました。 「腐った屍体を城塞ごしに投げ込むのは、攻城戦ではよく使われる手だが、火をつけるとは巧妙な。 放置すれば火事になり、火を消せば疫病の発生源となる。 夜明けまでには、きわめて凄惨なことになっているぞ」 「ジョンストン教授」のセリフ。 マイクル・クライトン「タイムライン」より。 腐った燃える馬の屍体を、投石機で城内に投げ込まれて。 ※「ジョンストン教授」はタイムマシンで中世に行った歴史学者で、その教授を連れ戻すために物語が始まるのです。 「しても、しなくても、どっちも駄目」とは上手い戦術です。 あっちを立たせばこっちが立たず。 このジョンストン教授、映画では「ビリー・コノリー」という役者が演じているのですが、私は何故か「ショーン・コネリー」だと記憶の入れ替えが起こっていました。名字も似ているし。 これは「インディ・ジョーンズ3」か、「星野之宣」のSF漫画「ブルー・ワールド」の影響なのかも知れません。 「ブルー・ワールド」もタイムトラベル物で、主人公の老教授がショーン・コネリーに似ているのです。 「思い出したぜ お前は百年前のあいつに似ているんだ 若い頃やつは慈悲深い本物の名君だったよ 土民の平安を心底願っていた だがそれもせいぜい最初の二十年さ いつまでも愚かなままの土民をやがて憎むようになった」 「皇兄ナムリス」のセリフ。 宮崎駿「風の谷のナウシカ」より。 お前とは「ナウシカ」、あいつとは「皇弟ミラルパ」。 ※漫画版「風の谷のナウシカ」にはアニメには登場しない、漫画だけの魅力的キャラクターがたくさん出て来ます。 中でも「皇兄ナムリス」は「裏ナウシカ」とも言うべき、冷徹で放漫な虚無主義者で、私の大好きなキャラクターなのでした。 誰か、1/6ぐらいで「フルスクラッチ」してくれないかなあ。 「それは簡単なことです。 つまり、少年・少女というのは本来、囲われて、保護されているものであって、自由な行動力を発揮しようがないものなんですよ。だから、片親だと発揮するんです。 昔から名作ものってみんなそうですよ。『家なき子』とか『小公子』『小公女』『十五少年漂流記』とか、みんなそうでしょ。 そうしないと、日常レベルを超えて子どもたちが行動したり決断したりするチャンスはないんです。 だから、一種の作劇術の一つだと思っています」 宮崎駿のセリフ。 稲葉振一郎「ナウシカ解読 ユートピアの臨界」より。 稲葉の「『ナウシカ』は母親から愛されなかった不幸な子、『コナン』もおじいさんは出てくるけども親子の関係はない、『トトロ』でさえ、核家族(原文ママ)はそろっていますが、お母さんはどこかに療養に行っている。いわゆる幸せな安定な家族は出てこない。 これは、宮崎さんの理想主義とか、『ルパン』から『紅の豚』にいたるような自由の感覚ときっと深いところでつながっているんじゃないか?」の質問に応えて。 ※この「宮崎アニメ研究家の熱い質問を、あっさりと交わす宮崎駿」はよく見られる図式であります。 ああ言えばこお言う。こお言えばああ言う。 わっはっはっは。 「『火垂るの墓』にたいしては強烈な批判があります。 あれはウソだと思います。 まず、幽霊は死んだ時の姿で出てくると思いますから、ガリガリに痩せておかなが減った状態で出てくる。 それから、巡洋艦の艦長の息子は絶対に飢え死にしない。 それは戦争の本質をごまかしている。 それは野坂昭如が飢え死にしなかったように、絶対飢え死にしない。海軍の士官というのは、確実に救済し合います。仲間同士だけで」 宮崎駿のセリフ。 稲葉振一郎「ナウシカ解読 ユートピアの臨界」より。 ※これもいかにも宮崎駿らしいセリフです。 ああ言えばこお言う。 わっはっはっは。 「武術の神と言われる亀仙人より強い天津飯でも歯が立たないドラムを瞬殺した悟空が8年修行して、同じ位の強さのピッコロさんと二人がかりでやっと倒したラディッツと匹敵する戦闘力を持つ栽培マンをあっさり倒した天津飯・ピッコロ等が束になっても敵わないナッパを悠々倒した悟空の2倍以上強いベジータがかなりパワーアップしても全く相手にならない強さのリクームを一撃で倒した悟空が更にパワーアップしても、それを半分の力で殺せるフリーザをあっという間にバラバラにして消した未来のトランクスでさえ仲間と束になっても敵わない人造人間17・18号に匹敵する強さを持った神コロ様でも敵わない程に生体エネルギーを吸って強くなったセルと互角の16号を大きく越える17号吸収態セルを子供扱い出来る精神と時の部屋パワーアップ後のベジータと随分差がある悟空でも勝てない完全体セルを一方的に痛めつけることが出来るブチ切れ悟飯をも越えたベジータが命を賭けても倒せなかった魔人ブウが更に凶悪になったブウと互角以上の戦いをしたゴテンクスよりも強くなった悟飯でも全く歯が立たないゴテンクス&ピッコロ吸収ブウが更に悟飯を吸収して強化しても全く歯が立たないベジット」 2ちゃんねるより。「他板からのコピペだけどワラタ」とある。 俺もこのオリジナルを書いた人、素晴らしいと思う。 ※結局「ベジットが一番強い」と言っているのであります。 いわゆる「強さのインフレ」と呼ばれる、少年ジャンプ漫画の得意パターンであります。 が、よく考えて見ると大昔の少年漫画「ハリスの旋風(1965)」もそうでした。これは少年漫画の基本なのかも知れません。 と思っていると「アタックNo.1(1968〜1970)」や「ガラスの仮面(1976〜)」などの少女漫画もそうだったなあ。 「ワープロで文章を書くとき、いちばん気をつけねばならないのは、その部分に最も適した文が思い浮かばないまま『まあ、あとで書きなおせばいいや』と思い、いささか不適当な文、つまり、小説家でいうなら、たとえば陳腐な描写、使い古された表現、自動化された文章などをさしあたって打ちこんでおいて、それをそのまま忘れてしまうことです。 たとえあとで一度二度読み返したとしても、陳腐な描写、使い古された表現、自動化された文章ほどすらすら読めてしまうものですから、『特ニオカシイトコロハナイ』と思い、そのままにしてしまうのです」 筒井康隆「天狗の落とし文」より。 ※「天狗の落とし文」は筒井康隆のショートショートや雑記などをまとめた本です。 私も本「超不定期雑記帳」や「製作記」を書く時に、いつも経験する事です。 また、その反対の事もあります。 読み返せば読み返すほど「ココハオカシイ」という部分が、次から次へと見つかって来て、何回も何回も書き直す羽目になってしまうのです。 「大阪人と名古屋人と神戸人の相違。 大阪人は馬鹿げたこと、滑稽なこと、突拍子もないこと、気ちがいじみたことを小声でぼそりと言う。 名古屋人はあたり前のことを、大声で、しかもできるだけ沢山言う。 神戸人はあたり前のことに対して、できるだけ沢山笑う」 筒井康隆「天狗の落とし文」より。 ※これは有名な「各国それぞれジョーク」が元ネタなのでありましょう。つまり。 豪華客船が沈みだした。 船長はそれぞれの外国人乗客にこう言った。 アメリカ人に「飛び込めば、あなたは英雄」、 イギリス人に「飛び込めば、あなたは紳士」、 ドイツ人に「飛び込むのがこの船の規則」、 日本人に「みんな飛び込んでますよ」。 末期的いろは歌留多 「い 命短し襷に長し。 ろ 老婆は一日にして成らず。 は 墓は死ななきゃ入れない。 に 逃げた女房に三くだり半。 ほ 仏の顔も三度笠。 へ 屁をひって火をつける。 と 溶けて流れて脳膜炎。 ち 塵も積もれば邪魔となる。 り りんりん淋病は筆の先。 ぬ 抜き足差し足釘を踏む。 る 類はホモを呼ぶ。 を 乙女の血糊。 わ わたし釈迦よねお釈迦さんよね。 か 可愛さあまって肉切り包丁。 よ 弱り目に逆エビ固め。 た 短小包茎夜河を渡る。 れ 礫死体は夜作られる。 そ そこのけ山の手電車が通る。 つ 月夜にカマを掘られる。 ね 寝耳に水銀。 な 涙隠して尻隠さず。 ら 楽あればクロード・チアリ。 む 昔取ったキネ旬。 う 歌は世につれ時代遅れ。 ゐ 井の中の蛙退化する。 の 脳ある鷹は爪に火をともす。 お 親子三人猫いらず。 く 組破れて傘下なり。 や 山の貴方のソーラー・ハウス。 ま 待てば賄賂の日和あり。 け KENT頂戴。 ふ 古里は遠きにありて思うもの近くば寄って眼にも見よ。 こ 弘法も筆おろし。 え 縁の下のもぐらもち。 て 亭主淡泊。 あ 足もとから湯気が立つ。 さ 三人寄れば悶着の種。 き 汽車の窓から早撃ちすれば。 ゆ 幽鬼は来るあなたは逃げた。 め 飯食って尻つぼめ。 み 見えざる聞かざる不貞腐る。 し 少年老いやすく愕然とする。 ゑ 越中ふんどし恥知らず。 ひ ひとり酒場で飲む後家は。 も 門前の狼習わぬ経を読む。 せ せんずり多くして子種今になくなる。 す すべての道は廊下へ。 京 狂気の沙汰も金次第」 筒井康隆「天狗の落とし文」より。 ※「命短し襷に長し」「老婆は一日にして成らず」「墓は死ななきゃ入れない」「亭主淡泊」が好きです。 昔の昭和歌謡曲の捩りも多いので、若い人には分からないモノも多いでしょう。 「『でもハリー』」彼に出口のほうへ押されながら、私は言った。 『こんなふうにひとりで脱獄できるのなら、どうして今まで待っていたんだい?』 『名誉にかけてホームズと約束したからね』と言って彼は、独房のドアを閉めた。 『これだけは、ぼくがとけない縛めなのさ』」 「ハリー・フーディーニ」のセリフ。 ダニエル・スタシャワー「ロンドンの超能力男」より。 ※フーディーニは「縄抜け脱出」を得意とした19世紀末のアメリカの奇術師で、「ロンドンの超能力男」は彼の登場する「ホームズ・パスティーシュ」です。 舞台上の拘束具は解けても、人との約束は破れない、とは良いセリフです。 「人間はいつまでたってもよくならない、ただ賢くなるだけよ。 賢くなると、蠅をつかまえて羽をむしりとることをやめないかわりに、羽をむしりとるためのもっとましな口実を考えだすようになるわ。 多くの子供たちがキャリー・ホワイトはかわいそうだっていうけどーーそのほとんどは女の子よ、お笑いぐさだわーー それじゃ毎日毎秒キャリー・ホワイトであることがどういうことかわかっているかっていえば、そんな子はきっと一人もいやしないわ。 彼らにはそんなことはどうだっていいのよ」 「スーザン・スネル(キャリーの友人・理解者)」のセリフ。 スティーヴン・キング「キャリー」より。 ※私はキング・ファンでは無いけども、彼の「キャリー(1974)」は傑作だと思っています。 これが処女作なのも納得であります。 映画でも漫画でもアニメでも、もちろん小説でも、処女作が面白くないヤツは、その後もやっぱ面白くないのであります。 「航空機の乗っ取りに対して『ハイジャックhijack』という言葉を、世界で初めて使ったのは、1958年2月19日付のイギリスのザ・タイムズ紙だという。 それまでは、禁酒法時代のアメリカにおける、密造酒の『追い剥ぎ』のことを意味していた。 禁酒法時代、カナダやメキシコで造った密造酒を、ひそかにアメリカへ運んできたトラックを、さも便乗を頼むような格好で『ハーイ、ジャック』と声をかけて止め、強奪するというもの。 ジャックは、ジョンの愛称、アメリカでは最も多い名前の一つだ。 つまりハイジャックは、元々は『やぁ、ジャック』という呼びかけの言葉に由来しているのだ」 中村浩美「飛行機の雑学」より。 ※「ハイジャック」の言葉が、禁酒法時代(1920〜1933)からあったと言う事実を初めて知り、ビックリしたのであります。 「【マインドコントロールの手段】 1)コンディショニング・・・パブロフの犬のようにある条件(ベルの音)をインプットすると意識の介入なしに別の反応が出てくるよう条件付ける。 2)バビチュエーション・・・常に人の前に対象物を触れさせておくと、変な物でもそのうち気にならなくなる。 3)イノセンティベーション・・・もので釣る方法。我々に味方すればこれだけ報酬があるぞ、と欲に訴える方法。 4)ロックオン・・・他の対象物に目をやらないようにロックしてしまう方法こちらの都合のいい情報だけを選択させる。 5)ポラライズ・・・YESかNOか、右か左か、極端に走らせること。中間を認めないと人間は自らの意思決定を他人にまかせるしかなくなる。 6)リインフォーメント・・・ちょっとづつの進歩のたびにちょっとづつ褒美を与え、気が付いたときには後戻りができなくなるようにしむける方法。 7)サブリミナル・・・人の知覚できない刺激を繰り返し与え、学習させる方法。 8)トランセンデンタル・・・超常的な経験によって一気にその人物の心をつかんでしまう方法」 2ちゃんねるより。 たまに「2ちゃんねる」は本当に勉強になるなあ。 ※これは男女の関係、夫婦の関係に似ているなあ。 なんつって。 「フロッピー1枚にはいるくらいの人生がちょうどいいと思わんかね?」 2ちゃんねるより。 ※本日記の2004年には「もうフロッピー・ディスクは無くなる」と言われていました。 ちなみに、私もフロッピー1枚に入るぐらいの人生が、ちょうど良いと思います。 「【詭弁の特徴】 1)事実に対して仮定を持ち出す。 2)ごくまれな反例をとりあげる。 3)自分に有利な将来像を予想する。 4)主観で決め付ける。 5)資料を示さず自論が支持されていると思わせる。 6)一見関係ありそうで関係ない話を始める。 7)陰謀であると力説する。 8)知能障害を起こす。 9)自分の見解を述べずに人格批判をする。 10)ありえない解決策を図る。 11)レッテル貼りをする。 12)決着した話を経緯を無視して蒸し返す。 13)勝利宣言をする。 14)細かい部分のミスを指摘し相手を無知と認識させる。 15)新しい概念が全て正しいのだとミスリードする」 2ちゃんねるより。 ※これには続いて具体例が紹介されていました。 つまり・・・、 「『犬ははたして哺乳類か』という議論をしている場合。 あなたが『犬は哺乳類としての条件を満たしている』と言ったのに対して否定論者が・・・ 1)事実に対して仮定を持ち出す。 『犬は子供を産むが、もし卵を生む犬がいたらどうだろうか?』 2)ごくまれな反例をとりあげる。 『だが、尻尾が2本ある犬が生まれることもある』 3)自分に有利な将来像を予想する。 『何年か後、犬に羽が生えないという保証は誰にもできない』 4)主観で決め付ける。 『犬自身が哺乳類であることを望むわけがない』 5)資料を示さず自論が支持されていると思わせる。 『世界では、犬は哺乳類ではないという見方が一般的だ』 6)一見関係ありそうで関係ない話を始める。 『ところで、カモノハシは卵を産むのを知っているか?』 7)陰謀であると力説する。 『それは、犬を哺乳類と認めると都合の良いアメリカが画策した陰謀だ』 8)相手のイデオロギーの裏をかき悪用する。 『左翼の間では犬は哺乳類であるというのは常識になっているけどね』 9)知能障害を起こす。 『何、犬ごときにマジになってやんの、バーカバーカ』 10)自分の見解を述べずに人格批判をする。 『犬が哺乳類なんて言う奴は、社会に出てない証拠。現実をみてみろよ』 11)ありえない解決策を図る。 『犬が卵を産めるようになれば良いって事でしょ』」 2ちゃんねるより。 この書き込みには「真っ当な意見と見せかけ、実は詭弁で論点をはぐらかす輩が多々おります。皆様も以下の『詭弁の特徴』を覚え、そういう輩を排除しましょう」と続いている。 ※10はネット掲示板で、11は女性に多そうですよね。 「オレ、なんで銀色のスーツ着てないんだろ? でも、目の前にコンピューターが置いてあるんだから、たぶん21世紀なんだな」 2ちゃんねるより。 「正直、22世紀はどうなっていると思う?」スレッドより。 ※私は子供の頃、21世紀は「銀の服を着ている」とは思ってませんでしたが、高層ビルの間を縫うように空に「透明チューブ」が架設され、中に「エアカー」が走っていると信じていました。 でも、何故か、一人一人が全員「小型通信機(携帯電話)」を持っているなんて事は、まったく想像しませんでした。 そおいうモンですね。 「なまずも スッキリッ!!春一番」 「イメクラ」だか「テレクラ」だかの幟(のぼり)に書かれていたコピー。 ※日記を書いた2004年は「阪神・淡路大震災」から「9年目」にあたりますが、それにしてもこの幟、不謹慎ですよねー。 「殺人のどこが悪い。善悪を決めるのは個人の基準だけだ」 「メルヴィン・リース」のセリフ。 1959年に5人の人を次々に殺害した。 ※このセリフで思い出すのは「一人殺せば人殺しであるが、数千人殺せば英雄である」と言う18世紀のイギリスの牧師「ポーテューズ」の言葉であります。 これはチャップリンの「殺人狂時代(1947)」の中で「一人を殺せば犯罪者となり、百万人を殺せば英雄となる。数が殺人を聖化する」で有名になりました。 以上「2004年」の日記から抜粋しました。 この年、私は「ラムダの操縦席」の製作記を書くため、いろいろな航空機に関する本を読んでいました。 「飛行機モデラー」でない私は、全く飛行機の事を知らなかったからです。 その中で「パイロットの視点で綴る『コクピット変遷史』」という本がとても面白く、勉強になったのでした。 その本からもいろいろ抜き出しているので、今回、紹介させて頂くのであります。 飛行機好きな人は「みな知っとるわい」だと思いますので、スルーして下さいね。 本の副題は「フライヤー1号からB777、F22まで、操縦席に焦点を当てた航空発達史」で、著者は「L.F.E.コームス」。 「青木謙知」訳、出版社は「イカロス出版」です。 1997年12月10日初版、「4,000円+税」という高い本なので、私は図書館で借りて読んだのでした。 「コクピットは、人間と機械のインターフェイスである。 従ってこのインターフェイスは、人間の手と嗜好にうまくマッチしている必要がある。 例えば、パイロットの大多数は、ほかの人々と同様に、右利きである。おそらくこの右利きに配慮した最適な例は、多くの単発機のコクピット配置で採られていた『右手を操縦桿に、左手をスロットルに置く』ということに現れている」 ※「コクピットは、人間と機械のインターフェイスである」とは穿った言い方です。 このセリフは「ラムダの操縦席製作記」でも、さっそく使っちゃいました。 「しかし1903年の10年後には、『左手を操縦桿に、右手をスロットルに置く』という航空機も作られていて、1909年の『英仏海峡横断機』のブレリオはその一つであった」 ※航空機開発初期にはいろいろ試してみた、と言う事なのでありましょう。 しかし左利きならいざ知らず、これは考えるだに使いにくかったでしょう。 「1903年のライト兄弟による飛行成功よりも以前の、成功に至らなかった飛行機の大多数は、飛行船のように根本的に安定した空中機であった。 言い換えれば、それらは船のように、空気の『波』に『乗る』ものであり、例えば左に向けたら、その経路を進み続けるだけというものだった。 しかし、模型飛行機による経験は、ライト兄弟に、飛行機というのは中くらいの安定性と若干の不安定さを有していなくてはならない、ということを確信させた。 これは、パイロットが常にその乗り物の操縦を維持できる、ということを意味している」 ※これも面白いです。 つまり「不安定だからこそ操縦できる」という事です。 思えば、人間が「歩く事が出来る」のも「不安定だからこそ」でした。 「コクピットという言葉は操縦手を波から多少防護するためによっとの上部デッキに設けられた場所のことで、海事用語から派生したものと見られる」 ※航空機はその先輩格「船」から採られた用語が多いのであります。 ちなみに「コクピット」は、「コック(鶏)」「ピット(囲い)」で「闘鶏場」「鳥籠」から来ています。 ところであなたは「コクピット」派?「コックピット」派?って当時の掲示板にも書いたっけ。 「初期の計器は、時には糸を使って横滑りをみることもあったが、最も重要な『計器』は、スリット・ストリームを感じるパイロットの『頬』であった。 『頬に当たる風』は、その後20年間に渡って、極めて重要な『計器』となっていて、これがまた、オープン型コクピットが支持される理由でもあった」 ※初期の航空機で、一番大切な「計器」が「人間の身体」であったと言うのは、とても興味深く面白い事実です。 「多くのコクピットにおけるパイロットの位置は、もし何らかの理由で中心線上に配置できないのであれば、左寄りである。 胴体が、2名の乗員を横並びで座るのに十分な幅がある場合は、これから説明するが、イギリスの飛行機ではパイロットは右側の座席に座らせた。 (中略) 疑問は『イギリスの多発機では、主役のパイロットがなぜ右に座ったのか?』である。 答えの一つは、イギリス海軍飛行部隊が、海軍では右側に位置する人間が左側より上位であるという慣例を、最初の航空機に取り入れて運用したことである。 これらは総て、航空交通の規則ができる前に決まっていたものだ。 (中略) イギリスでは、パイロットが右に座るという方式は、1930年頃まで民間とイギリス空軍の大型機で使われていた」 ※今では航空機のパイロット「機長」は、みな「左側」に座っているのであります。 「なぜ、1930年代中期まで、空軍の戦闘機や複座機にオープン式コクピットが残されたのか? 多くの理由があるが、まずエンジンの臭いで調子がわかること、そして操舵に対する機体の反応を知るために、顔で直接風を感じるのを好んだことが挙げられる。 おそらく三番目の理由として挙げることができるのは、オープン式の運転席を持ったスポーツカーやヨットと同様に、パイロットたちがアウトドアのムードを好んだということだ」 ※これも前述の「一番の計器は人間の身体」に通じます。 「密閉式のコクピットは、高速化を目指す中で、抵抗を作り出す突起物や開口部を取り除く重要性の認識の高まりとともに、当時の大型機の多くで標準的な様式となっていった。 つまり『高速化』という性能上の必要からであって、パイロットの快適性を考えた末のものではなかった」 ※確かこの本で読んだ事ですが、「風防」の開発は「航空郵便」のためでもあった、らしいのです。 つまり、ヨーロッパでアルプス越えの際「パイロット」を超冷気から守るためなのであります。 「パイロットがうつ伏せになるコクピットは、1950年代のミーティア・ジェット戦闘機で試され、パイロットの高Gへの耐久力は高まったが、やはり成功はしなかった。 このアイディアが失敗したのには二つの理由がある。 一つはうつ伏せでは射出座席の装着が困難であったことと、もう一つはパイロットの首が『痛くなる』ことであった」 ※なるほどなあ。 わっはっはっは。 「ドルニエDo335は、コクピットに3つの緊急ボタンを持っていた。 最初のものは後方のプロペラを吹き飛ばす火薬に点火するもので、二番目は尾翼上端を吹き飛ばす火薬用、三番目のボタンが射出座席を作動可能状態にするものであった。 これらの操作を終えた後に、パイロットは手動でキャノピーを外し、もしまだ時間が残っていたら、座席のアームレストにある点火トリガーを操作した」 ※これらの操作を終えた後、「時間的に可能であれば」と言うのが面白いのであります。 「1980年代の操縦席と、それ以前の時代の操縦席との最大の違いは、おそらく、すぐに入手できる『将来』の情報の量であろう。 地図や性能表、メモリーのない機械的計算機を使っての時間消費に代わって、パイロットは、選択可能な将来の時間において航空機がどこにいることになり、どのくらいの燃料が残っているかなどについても、簡単にデータを入手できる」 ※1980年以降の航空機が電子機器によって「将来の情報を手に入れられる様になった」とは、面白い言い方です。 歯車と油圧の時代から、コンピュータの発達は我々に「未来の情報」を手に入れる事を可能にした、のです。 次に続く二つは、柳生一「図解・ハイテク飛行機」からの抜粋です。 「機長が左座席なのは、船の船長がブリッジの左にいる習慣を受け継いだものである」 ※前述の通り、第二次世界大戦が始まる前のイギリスでは、機長=パイロットは右側に座っていたのであります。 「たとえば決められた巡航高度が1万3000mだった場合、離陸して一挙に1万3000mまで上昇するのではない。 当初はたとえば1万mまで上昇し、この高度でしばらく水平飛行し、燃料を消費して機体を軽くしてからその後に次の高度に上昇するというように、階段状に高度を上げていく。 一挙に上昇しない理由は、機体の重量による。 特に長距離を飛ぶジェット機では、燃料を満タンにしているため重く、一挙に上昇すると、燃料消費量が多き過ぎるのである」 ※これも飛行機を知っている方には常識なのでしょうけども、私には「なるほどなあ」だったのであります。 だって松本零士の戦記漫画「コクピット」じゃ、一気に上昇していたし。 とりあえず今回はここまで。 昔の日記からの抜粋なので、記述間違いや出典間違いがあるかも知れません。 その場合は、間違いを教えていただければ、これ幸いなのであります。 |
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