SYU'S WORKSHOP
NOTES
零十三・作
「幽霊がやって来る」



その占い師は輝く水晶の球を見つめながら、
「一週間後の今日、あなたの家に幽霊がやって来るのが見える」
と重々しく言った。
オレは昔から幽霊の類が苦手だったので、
「どうしたらいいでしょう。幽霊が家の中まで入れないような方法は・・・」
「大丈夫。このお札を家中に貼っておけば幽霊は一歩も入れない」
オレは大金を出してそれを買った。

占い師の予言した日が近づくにつれて、
オレの不安は大きくなっていった。
仕事も手につかないので会社も休んだ。
お札はすでに貼ってあるが、それでも落ち着かない。

そして、その日がやって来た。
その時、オレの頭に名案が浮かんだ。
「なんてことはない。オレが家にいなければいいんじゃないか」

オレは外に出た。
ひどく体力が弱っていたオレは、
急に飛び出してきたトラックをよけることはできなかった。

幽霊はやって来た。
帰る家のない幽霊が。



(1977年2月22日放送)



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