よくアニメーションでこんな表現があります。 これは瞳がウルウルしていて、「感動している」とか「悲しんでいる」という定番の表現です。 これは単純に「瞳」の中のハイライトを繰り返しで動かしているに過ぎない技術ですが、今では普通に見かけられるこの技術も、ある時にある人によって「発明」された手法なのでした。 それは、1968年の東映動画の傑作アニメーション映画「太陽の王子 ホルスの大冒険」において、演出の高畑勲氏によって始めて試された技術だったのです。 この様に、アニメーションは時代と共にいろいろな「新しい手法」が採り入れられてきました。 最近ですと「CGとの融合」という事が上げられるかも知れませんが、私として、この「瞳ウルウル手法」が発明された時のインパクトを持ち得ていない様な気がしています。 さて、同様に、「爆発時、途中に1枚だけ黒コマを入れる」という定番技法があります。 これです。 これは途中に、 という黒コマが入っているのです。 これの応用で「ビーム光線発射時の黒コマ」というものあります。 例えば、こんなカンジ。 これも途中に、 という黒コマが入っているのです。 現実世界の爆発を見てみても、こんな風にはなっていないし、また実写映画でもこの様な処理をする事はあまりありません。まさにアニメが発明した「アニメならではの手法」と言えると思います。 何故この様な手法が必要であり、また効果が上げられるのか、という事を推測するに、「アニメでは眩しい光を作るのが苦手」だからなのではないでしょうか? 確かに「透過光」という手法で実際の光をセルアニメ(今日日セルアニメなんてあまり存在していませんが)に合成する方法が、昔から取られてきていますが、それでもやっぱり「実写の目も眩むような激しい光」には及ばなかったのでしょう。 そこで考え出したのが「光の直前にその反対の黒コマを挟み、そのギャップによって印象的な眩しい光に錯覚させる」という、この手法なのではないでしょうか。 「光あるところに影がある」とは、昔のテレビアニメ「サスケ」の名セリフでありますが、その様に「影」を使用することによって「光」を表現する、という事だったのではないでしょうか? また「光と影」とは、ファンタジーの永遠のテーマでもあります。 話ちょっと違いますが。 アーシュラ・K・ル・グィンの「ゲド戦記」を筆頭に、「指輪物語」や「ナルニア国物語」、そしてファンタジー映画の傑作「ダーク・クリスタル」もみな、「光と影」がテーマなのです。 アニメの語源は「アニミズム」である、という説があります。森羅万象に宿るであろう魂を語源を持つ「アニメ」が、この「光と影」にたどり着いたのは、これ必然だったのかも知れません。大げさですか。 ところで、この「黒コマ」技法、いったいいつ発明されたモノなのでしょうか? 最初の「爆発とビーム」盛りだくさんアニメ「宇宙戦艦ヤマト(1974)」の頃にはまだ無かった(もしくは多用されていなかった)ような気がするんですが・・・。 いつの何のアニメが最初か、ご存じの方がいらっしゃったら、ぜひ、教えていただきたいのでありました。 (追加補記) 先日、友人と話していて、「それは、東映動画のどうぶつ宝島(1971)ですでに使っていたんじゃないか?」という事になり、さっそくLDを見てみたのですが残念な事に「黒コマ」はありませんでした。その話を聞いたときには私も「ああ、そうだそうだ。絶対そうだ」と思ったのですが・・・。 ちなみに「未来少年コナン(1978)」にはすでに、この「黒コマ」が見られます。 という事は「1970年代半ば」頃に編み出された技法なのかな、という気もしています。 また、「それは大空魔竜ガイキング(1976)の第36話で初めて使われたんだよ」などと妙に具体的な事を言う友人の証言もあるのですが、私にはそれを確認する資料映像を持ち合わせていないのでした。その友人に問いつめると「いや、何となく」と頼りない返事・・・。 という事で、再び、詳しい情報をお持ちの方のご一報をお待ちしております。 |
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