SYU'S WORKSHOP
ESSAY VOL.4
「カツカレーの思想」について

(2001年11月16日)


炊きたてのホカホカの白いご飯の上に、サクッと揚がったカツを一口大にカットしてきれいに並べ、その上にじっくり煮込んだカレールーを、ご飯の上はもちろん、カツの上にもたっぷりとかける・・・。
ああ、「カツカレー」ってなんて魅力的な食べ物なのでしょうか。

あなたがもし、無人島に一人漂着し、その後の人生をずっとその小さな島で過ごさなきゃならないとします。
不幸なことに島の中にも海の中にも食べられる物は何一つない、とします。
そんな時に親切な神様があなたの前にやおら現れて、「これから一生、そなたの望む食べ物を朝昼晩と出してあげよう。ただし、それは同じ食べ物じゃないとならぬ」と言ったとします。
さて、あなたは何をお願いしますか?
私はもちろん!「カツカレー」なのでした。

カツカレーなら同じ店の同じカツカレーだとしても、私は朝昼晩、これから死ぬまで一生食い続けてもかまわない、と思うのです。

カツカレーのメインは「カツ」なのか「カレー」なのか、という議論が昔からありました。
「カツがメイン派」は、「カツがなきゃ単なるカレーライスじゃん。カツがあってこそのカツカレーなり!」と言いますし、反対の「カレーがメイン派」は、「本末転倒!カツカレーはあくまでカレーライスの特別バリエーションであり、あくまでカレーがメインに決まっているなり!」と言い張ります。
私は「カレーがメイン派」です。
やはり、まず最初にカレーがありき、です。
例えば、「カツは不味いけどカレーは旨い」カツカレーと、「カツは旨いけどカレーは不味い」カツカレーだと(実際はどちらも嫌ですが)、前者の方が「まだ良い」と思うのです。

時々、「トンカツ屋」でカツカレーがメニューにある場合がありますが、確かにカツはしっかり肉厚で旨いのですが、その上にかかっているカレーのルーが「ま、こんなモンでしょ」みたいないい加減なヤツだったりすると、本当に悲しくなります。
また、別の店では極端に「ルー」が少なかったりして、「これってトンカツソースの代わりにカレーソースをかけているだけじゃん!」などと、これまた憤慨してしまいます。
カツカレーのカレーは決してカツの「ソース」ではなく、いや、その反対に、カツカレーのカツは「カレーの具なのだ!」と私は声を大にして言いたいのでした。

とは言え、「カレーの具の役割は全てカツに任せた」とばかりに、ルー自体に何の具も入っていないカツカレーもあったりしますが、これもまた私的には許せません。
カレーのルーはカレーのルーとしてちゃんと独立して「豚肉or鶏肉、牛肉」などの肉類はもちろん「タマネギ」だの「ジャガイモ」だの「ニンジン」だのが入っていてこそ、「お。さらにカツまで付いてきた!ああ幸せ・・・」という事になると思うのです。

そして、カツカレーはきちんと「瀬戸物の平皿」と「ステンレスの大きなスプーン」で、皿を「カチャカチャ」言わせながら食いたいモノです。
よく仕事の残業時の夕食などで出前のカレーが「スチロール」の容器と「プラスチック」のスプーンなどでやって来たりして、「コキュコキュ」言わせながら食う事ほどわびしい事はありません。

ところで、一番最初に「ホカホカの・・・」と書きましたが、実はカツカレー、冷めても結構旨いと思うのです。カツの「衣」やご飯にカレーがじっくり染み込んでいたりして、これもなかなかオツなモノなのでした。

この様に、私の心を魅了して止まないカツカレーなのですが、ひとつ問題があるのでした。
太るんですよねー、カツカレー。

それにしても、ウチの近所のソバ屋、「カツ丼」も「カレーライス」もあるというのに、「カツカレー」がないのは、一体全体どういう理由なのでしょうか?
不思議だなあ。



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