SYU'S WORKSHOP
ESSAY VOL.7
「東宝SF映画(1)
三大怪獣 地球最大の決戦」
について

(2001年12月5日)


1964年製作の東宝SF映画「地球最大の決戦」であります。
監督は本多猪四郎。脚本は関沢新一。
そして特技監督は円谷英二。
ストーリィは、金星から隕石に乗って地球にやって来た「キングギドラ」に対抗し、地球側の「ゴジラ」「ラドン」「モスラ」が協力して戦う、というもので、あの傑作怪獣「キングギドラ」が一番最初に登場した映画であり、また最初の「複数の怪獣バトル」が描かれた映画でもあります。

数年前に買ったLDを久しぶりに引っ張り出し、ついこの前観たのですが、37年前の昭和39年の映画という事もあり、今からすると「何だそりゃ?」というシーンが幾つかありましたので、ご紹介し、愛情もって突っ込まさせていだたく次第なのであります。

例えば、こんなシーン。

とある劇場からのテレビ公開生放送中継。
番組名は「あの方はどうしているのでしょう?」。
人捜しの番組で、司会は当時の売れっ子漫才師の「青空千夜一夜」。
その舞台の幕前に小さな男の子二人が上がって来る。
にこやかに「坊やがお会いしたい方は誰でしょう?」と司会の青空千夜一夜。
子供達、屈託無く上気した顔で「モスラー!」と叫ぶ。
ドッと笑うそれを見ている客席の大人たち。
苦笑し困惑した表情で司会者「これは驚きました・・・。しかし困っちゃったなあ・・・」
「駄目なの?嘘つきっ!」と無邪気な子供たち。
「いやあ、駄目じゃないんだけどねえ・・・」と司会者。
が、続いて、「それでは特にテレビ局にお願いしまして・・・」と、やおら舞台の幕が開くと、そこに音楽と共にインファント島の「双子の小美人」の入った箱が繰演で舞台中央に登場して来る。

いるんかいっ!モスラはいるんかいっ!


続いて、その子供達と「小美人」の会話。
「おねえちゃん、モスラ二人とも元気?」
「ありがと。でも、ひとつ死んじゃったのよ」

「ひとつ」かいっ!あんたらの「守り神」を「ひとつ」呼ばわりかいっ!


次は阿蘇山からラドンが復活するシーン。

多くの観光客が訪れている阿蘇山火口。
その中の若い新婚カップル、男の方が被っていた帽子を突然の風で崖の上から火口の下に飛ばされてしまう。
気の強そうな太った新妻「ねえ、どうするの?あれ私の心からのプレゼントよー」
気の弱そうな痩せた旦那「でもぉー、ちょっと遠すぎるよー」
それを見ていた胡散臭い無職風のおっさん、二人の間に分け入って、「どうです、拾ってきましょうか?拾い賃は・・・700円!いや、500円!えー200円でどうだ!」
そして、火口まで急な崖を降りて行ったおっさん、出現したラドンに襲われてしまう。

おっさん!「200円」で、いいんかいっ!


いずれのシーンも観ていて思わず大爆笑してしまったのでした。


でも、今見ても格好良いシーンもあります。

ゴジラが最初に登場するシーン。
夜の海を航行する客船。カメラがその客船の行く先にPANすると、泡立つ海面!
ゴジラ出現か!と思っていると、それは鯨たちの群だった。
が、さらにカメラその先にPANすると、今度は本当にゴジラが海中から出現する!

こんなシーンもありました。

日本に上陸したゴジラ。
街中を破壊しつつ何処かへと向かっている。が、フト、その動きを止め、夜空の一点を見つめる。
月の光を逆光に浴びて流れていく夜の雲。美しい夜空。
そこに、シルエットのラドンが滑り込んでくる・・・。
静かに見つめるゴジラ。
ゴジラを無視してそのまま飛び去っていく巨大なシルエット・・・。


また、格好良いと言えば、何と言ってもこの映画で初登場したキングギドラの「地上を走査」する破壊光線はSF映画史上に残る傑作シーンでありましょう。

さらに、この映画で「金星人に精神を乗っ取られたセルジナ公国のサルノ王女」を演じた「若林映子」のエキセントリックな美しさも特筆すべき点だと思います。
私の持論に「SF映画には美少女もしくは美女が必須」と言うのがありますが、この映画を観るとそれを再確認させてくれるのでした。

しかし、この「地球最大の決戦」の「最大の欠点」は、キングギドラに対して「地球の怪獣同士協力して一緒に戦おうよ」と、仲の悪いゴジラとラドンを説得するモスラ、という漫画っぽい設定であります。
多分、「悪い意味」で、東宝SFが最初に「子供の観客」を意識した映画なのではないでしょうか?
昔の少年ジャンプの「ケンカ番長漫画」じゃないんだから・・・。

ちなみに、この映画は1971年(昭和46年)に「東宝チャンピオン祭り」としてリバイバル公開されています。
その時の併映は「帰ってきたウルトラマン」「いなかっぺ大将」「みなしごハッチ」そして「マッチ売りの少女(立体アニメーション)」なのでありました。



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