SYU'S WORKSHOP
ESSAY VOL.128
「赤塚不二夫のコレ」
について

(2011年7月2日)


今回はいつもの「漫画における『ない』けど『ある』」じゃなく、「赤塚不二夫」について考えてみたのであります。

しかも、「赤塚不二夫」総論ではなく、「赤塚不二夫のコレ」について考えてみたのであります。

「コレ」とはコレであります。



「コレ」は一体何なんでしょうか?

上の絵は「天才バカボン(1967〜78)」からですが、赤塚不二夫の極初期の作品や「奇麗な女性キャラ」を除き、皆、「コレ」を描いているのです。

私は最初、「ノドチンコなのだろう」と思いました。
「口蓋垂(こうがいすい)」だと思っていたのです。
しかし、口蓋垂(えーい面倒臭い)ノドチンコにしては、描かれる位置が下過ぎます。

しかも、この絵に色が付く時には「顔の色」と同じ色で塗られているのです。
「ノドチンコ」であるなら、それは「顔の色」より「口の中」より暗い色であるべきです。

子供の頃、私はワケが分からず、それでも赤塚漫画を描く時は、いつも「コレ」を描いていたのです。
「コレ」がないと赤塚不二夫にならないのです。

「コレ」が何なのか判ったのは、それから数年してからでした。



この絵は作者代わって「藤子不二雄」の「忍者ハットリくん(1964〜68、81〜88)」の「ケン一」です。
矢印が示しているのは「ケン一の舌」です。

これを見ると「赤塚不二夫のコレ」が何なのかが判ります。
「コレ」は・・・。「舌」なのでした。



大昔の漫画には「舌」は描かれませんでした。
それがある時、口の中の膨らみとして「舌」が描かれる様になりました。
時には舌のセンターに走る凹み「舌正中溝(ぜつせいちゅうこう)」も描かれる事もありました。
上の「ケン一の舌」は、それを描いたモノであります。

つまり、「赤塚不二夫のコレ」は、「舌正中溝」を「極端」に表現した「舌」だったのです。

当時「森田拳次(1939〜)」も同様の「舌」を描く事がありましたが、「赤塚不二夫(1935〜2008)」ほど統一はされていませんでした。
また、赤塚は「口」と「舌」をつなげて一筆で描いているのです。
さすが天才、赤塚不二夫。

これでいいのだ〜。




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