SYU'S WORKSHOP
ESSAY VOL.136
「クシャナの髪は金色」
について

(2012年2月4日)


以前、漫画版の「巨神兵」をフルスクラッチした事がありました。
巨神兵オーマ製作記)。

その際、巨神兵の巨大さを出すために、台座に「クシャナ」を(これもフルスクラッチして)立たせました。
ご存知の方も多いと思いますが、アニメ「風の谷のナウシカ(1984)」と漫画「風の谷のナウシカ(1982〜1994)」は様々な点で異なっています。
もちろん、どちらも「宮崎駿」ですが制作年代を見て判る様に、最初、漫画連載が始まり、その途中でアニメが作られ、その後再び漫画連載が続いたのです。
(この連載は宮崎駿がアニメ制作に入る度、5回も長期中断されています)

私たち漫画「風の谷のナウシカ」のファンは(もちろんアニメ版も好きで、原作漫画とアニメが別物というのも重々承知していたのですが)アニメの「クシャナ」を見てビックリしたのです。

それは漫画の「クシャナ」とアニメの「クシャナ」の髪の色が違っていた事でした。
(それに比べるとアニメの〈クシャナ〉の左手が義手なんて、些細な事です)

漫画単行本2巻(1983)の綴じ込みポスターで描かれていた「クシャナ」の髪の毛が「金髪」であったのに対し、アニメ(1984)の「クシャナ」の髪の毛は単なる「茶色」であったのです。



私がフルスクラッチした「巨神兵」は漫画版です。
従って、「クシャナ」も「金髪」にしたのです。

フルスクラッチした「巨神兵」は実寸33センチ、縮尺は「1/123」。
つまり「クシャナ」も「1/123」の1センチちょいの小さなフィギュアで製作しました。
しかし、「クシャナ」の髪の色は「漫画版」か「アニメ版」かを表現するための重要なポイントだと判断したのでした。

で、です。
これを、


私が所属させて頂いている「宮崎メカ模型クラブ」で、2006年春の「静岡ホビーショー」の「モデラーズ合同作品展」に展示したのです。

「静岡ホビーショー」に行かれた事がある方はご存知かも知れませんが、あのイベントは模型好きなマニアな方だけではなく、多種多様な人々が見に来てくれる希有なイベントです。
「入場料が無料」というのが、その理由なのでしょう。

二日目の事だったでしょうか。
私たちの「宮崎メカ模型クラブ」のブースに、若い母親と小学校に入る前ぐらいの、4・5歳ぐらいでしょうか、小さな女の子が訪れてくれたのです。

展示ブースは通常の折り畳み会議テーブルを使っています。
つまり、高さ「70センチ」の上に作品が(通常は)置かれている事になります。
4・5歳の平均身長は1メートル前後ですから、辛うじて展示した作品を見られる事になります。

そして母親に連れられたそのガキンチョは(あわわ。いや、聡明そうな眼差しをした娘さんは)、私の作品を見てこう言ったのです。

「色が違う」。

私は客相手が苦手で席を外している事が多いのですが、その時は珍しくブースに居たのです。
私はそれを聞いて狼狽しました。
「あ・・・あのね。お嬢ちゃん、これはアニメのクシャナじゃなくて漫画のクシャナなんで金髪なんですよー」とありったけの強ばった笑顔で優しく説明したのです。
それを聞いた横にいた母親が慌てて「あ、どうもすいません。何か、この子が色が違うなんて言って・・・」と申し訳なさそうに言いました。
でも、私の説明も自分の母親のフォローも「聞く耳持たん」と彼女は再び言ったのでした。

「でも、色が違う・・・」

があああああああああああああああああああああああああああ。
恐ろしい!
私は「マニアの大人」よりも「小さなガキンチョ(あわわ。小さな女の子)」の方が本当に恐ろしい!!!



蛇足ながら。
「ナウシカ」の声を演じた「島本須美」より、「クシャナ」の声を演じた「榊原良子」の方が歳下だって知っていました?
(彼女たちは今でも私の大好きな声優です)
私はこれを知った時、とっても吃驚したのであります。




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