雪が降る日には革命が起こるモノなのであります。 史実の世界でもフィクションの世界でも。 よく東京に大雪が降った時、そして夜、テレビのニュースでは「下からライトアップされた国会議事堂を背景に降り積もる雪」の映像を放送したりしますが、それを見ると私は妙に心が騒ぐのです。何か大変な事が起こりそうな気がして。 そもそも関東在住の私にとって「雪が降る」事自体が珍しいのですが、これがさらに「夜の雪」となると、私はそこに非常に「ドラマチック」なモノを感じるのでした。 これは多分、「226事件」のイメージから来ているのだと思います。 「226事件」とは、日本の歴史上の事件であります。 1936年、昭和11年2月26日、まだ日本が太平洋戦争に突入する前、当時の日本の将来に憂いを抱いた陸軍青年将校と千数百名の兵士たちにより、陸軍省、警察庁、大臣私邸、新聞社などが襲撃・占拠された事件です。 この事件を描いた映画では必ずといってよいほど「夜の雪の中を静かに進軍する決起軍兵士たち」のシーンが印象的に登場しています。 また、それを遡ること二世紀半前の1702年、元禄15年にも日本史に残る有名な「夜の雪の中の謀反」が起きています。 いわゆる「忠臣蔵」の名で知られる「赤穂浪士の討ち入り」事件です。 これまた後世に描かれたテレビや映画の中で、やはり「深夜の雪中を吉良邸に向かう武装した集団」の姿が勇壮にそして悲壮感たっぷりに描かれてきました。 国外に目を移せば、、第一次世界大戦後の「ロシア革命」を描いた「デビット・リーン」の超大作映画「ドクトル・ジバコ(1965)」においても、「雪の中の革命」シーンが描かれています。印象深いのは、雪の降り積もった深夜の街の路地裏において、潜んでいた革命軍騎乗兵たちが一斉に「剣」を抜刀するシーンです。 建物の影になって彼らの姿は見えないのですが、その抜刀された「剣のきらめき」だけが暗闇の中に浮かび上がるという名シーンなのでありました。 さらに、フィクションの世界において、「押井守」のアニメーション「機動警察パトレイバー」でも、この「雪の中の革命」が登場します。しかも二回も描かれています。 「機動警察パトレイバー」の最初のOVA(1988)の第5話と6話の「二課の一番長い日」で「一部の自衛隊同志による東京占拠」が起こるのが、やはり「雪の日」なのです。 物語の主人公たちが勤務する「警視庁特殊車輌二課第二小隊」の「遅れた正月休み」、物語の設定では「1999年2月」の事(アニメが発表された時代からすれば、近未来の話)。 久しぶりの休暇に暇を持て余していた「篠原遊馬(あすま)」は、同僚の隊員「泉野明(のあ)」の実家である北海道の苫小牧に無理矢理押し掛けて来ています。 その深夜、テレビの臨時ニュースで「自衛隊による東京占拠」を知ります。 愕然とする「遊馬」と「野明」。 「野明!東京へ行くぞ!」。 そして二人を乗せ、吹雪の雪原を進む汽車の映像をバックに遊馬のモノローグが入ります。 「そして、東京で俺たちを待っていたのは・・・、『戦争』だった・・・」。 まことにドラマチックなアニメなのでありました。 この「前後編」に分かれたOVAアニメーションの「前編」の格好良さは、これ、アニメーション史に残るモノだと思います。 (それだけに残念なのは後編。コンパクトにお話がまとまり過ぎなのでした)。 この「雪中の自衛隊による反乱」テーマは同じ「押井守」によって、劇場版「機動警察パトレイバー2(1993)」において再び繰り返し描かれています。 また、1978年の傑作東宝SF映画「ブルークリスマス(監督、岡本喜八。脚本、倉本聰)」では、さらに凄惨な状況が描かれています。 なんと、雪降るクリスマスの夜に世界各国の軍部が武装決起し、大虐殺が始まるという物語なのでした。 そう言えば最近のアニメ「メトロポリス(2001)(原作、手塚治虫。監督、りんたろう。脚本、大友克洋)」でも、地下に押し込められ悪政に喘いでいたメトロポリスの住民たちが地上へと反旗を翻したのは、雪の日の事でしたっけ。 天空より静かに降り注ぐ夜の雪。 私にとって、それは美しさとともに心騒ぐモノなのであります。 何かが起こりそうな「切迫感」や「禍々しさ」を覚えるのでした。 白い雪と流血の赤い色。 冷たい雪と熱き情熱の思い。 この「静」と「動」の組み合わせに、私は「ドラマチック」さを感じるのです。 雪降る日には革命が起こる・・・。 あ、ちなみに私は別に現状の世の中に革命を待ち望んでいるワケではありませんので、あしからず。 |
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