「家来は三人」なのであります。 例えば、どんぶらこっこ。 川上から流れてきた大きな桃を、洗濯に来ていたお婆さんが偶然ゲット。 家に戻ってパッカーンと切ったら、産まれて飛び出る桃太郎。 スクスク成長、勝ってくるぞと勇ましく鬼ヶ島に鬼退治。 途中で吉備団子に釣られて、 1)「犬」が仲間になり、 2)「猿」が仲間になり、 3)「キジ」が仲間になって、 やがて辿り着いた鬼ヶ島。 向かってくる赤鬼青鬼を千切っては投げ、千切っては投げ。 金銀パールたくさんのお宝を持ち帰ったとさ。 ご存じ「桃太郎」であります。 「家来は三人」という仕様に、私たちは幼少の頃から聞かされて育ってきたのであります。 次に聞くのは、この話ではないでしょうか。 唐僧の偉い坊さん三蔵法師が、天竺つまりはインドへ、ありがたい経典求めて旅に出る。 途中、旅のお供となったのが、 1)斉天大聖の名でも知られる石猿「孫悟空」、 2)破戒僧で豚の妖怪「猪八戒」、 3)天界から堕ちた人喰い化け物「沙悟浄」、 の三人なのでありました。 ご存じ「西遊記」であります。 「西遊記」ほど時代と共に様々な媒体で「リボーン」され続けている物語はありません。 小説や映画はもちろん、TVドラマやアニメや漫画、舞台や人形劇等々、ありとあらゆるジャンルから「西遊記」は出ているのです。 この前、駅前に出来た新しいパチンコ屋でも、「最新機!最胸伝奇 パイ遊記」と賑やかなポップ広告も出ていたのであります。 「パイ遊記」たぁ、心穏やかでは、いられないではありませんか。 「オズの魔法使(1939)」は、「ジュディ・ガーランド」主演の大昔のMGMミュージカル映画の傑作です。 原作小説は「オズの魔法使い」と「い」が付きます。 本作は、私の好きな「ロボットもの」としても傑作なのです。 カンザスの農場で暮らす「ドロシー」は、ある日、巨大な龍巻に巻き込まれ、魔法の国「オズ」へと運ばれてしまいます。 そこで、ドロシーは「懐かしの我が家へ帰る旅」に出るのです。 途中、仲間になるのは、 1)知恵のない「カカシ」、 2)心の無い「ブリキ男」、 3)弱虫の「ライオン」、 の三人でした。 こうして「足りないモノを抱えて悩む連中」の、不思議な道行きが始まったのです。 冒頭で書いた通り、本作は「ロボットもの」の傑作でもあり、「心を探すロボット物語」の嚆矢だと思います。 「鉄腕アトム(1951〜)」や「人造人間キカイダー(1972〜73)」の先達なのであります。 「何でボクは心が無いのかなあ・・・」と泣く「ブリキ男」は、いつ観ても私も泣いてしまうのでした。 「怪物ランド」の王子「怪物太郎」が、人間勉強のためにやって来たのが人間界。 そこで「あらま荘」というボロ・アパートの隣、古く大きな西洋屋敷に引っ越してきます。 その際、「怪物ランド」から召使いとして連れてきたのが、 1)怪物界の伯爵「ドラキュラ」、 2)月見うどんが大好き「狼男」、 3)心優しい大男「フランケン」、 の三匹(三人)でありました。 「怪物くん(少年画報1965〜69、少年キング1967〜69)(アニメ1968〜69、80〜82)」であります。 一番最初のアニメ主題歌によれば、「ハイざます!」「ウォーでがんす!」「フンガーフンガー!」なのです。 私は大人になってから、フランケンの「フンガー」が「空腹(der Hunger)」のドイツ語読みだと知って吃驚したのでした。 私が子供の頃は、海外アニメ「ハンナ・バーベラ」の全盛期でもありました。 「ドラ猫大将(1961)」「スーパースリー(1966)」「宇宙怪人ゴースト(1966)」「宇宙鳥人Uバード(1967)」「怪獣王ターガン(1967)」「大魔王シャザーン(1967)」「チキチキマシン猛レース(1968)」「スカイキッドブラック魔王(1969)」等々、幾つかの主題曲は今でも「そら」で歌えるのです。自慢じゃ無いけど。 「宇宙怪人ゴースト」はヒーロー物です。 両腕に「Uバンド」という超エネルギー発生装置を装着し、 1)「アラン」という少年と、 2)「ケイト」という少女と、 3)「ピッキー」という猿と一緒に、 宇宙を股に掛けた冒険を繰り広げるのでした。 「ヒーロー」が一緒に行動するのが「少年」「少女」「ペット」というのは、児童向け冒険物語の定番でありました。 「ラビリンス/魔王の迷宮(1986)」は、「ダーク・クリスタル(1982)」の「ジム・ヘンソン」が製作した、マペットと人間が共演するファンタジー映画でした。 「ジェニファー・コネリー」演じる少女「サラ」が、「デヴィット・ボウイ」演じるゴブリン王に連れ去られた、幼い弟を助け出すために、「ゴブリン・シティ」の迷宮へと入る物語であります。 その冒険の中で、 1)「ホグル」という欲深いゴブリンと知り合い、 2)「ルード」という毛むくじゃらの臆病な怪物と、 3)「サー・ディデュモス」という怒りっぽい犬の騎士と共に、 「ゴブリン城」へと乗り込むのでした。 本作は「オズの魔法使」がベースになっています。 その証拠に、「オズの魔法使」には「トト」という「ケアーン・テリア」が出て来ますが、それに呼応するように、本作には「マーリン」という「オールド・イングリッシュ・シープドッグ」が出てくるのでした。 近年のSF映画にも「三人の家来」が出て来ました。 アメコミ(マーベル・コミック)を原作とする「マイティ・ソー(2011)」」であります。 北欧神話の元となった宇宙の何処かにある異世界「アスガルド」。 そこの王家を守り、主人公「ソー・オディンソン」の戦友が、「レディ・シフと三戦士(ウォリアーズ・スリー)」でありました。 「シフ」は最強の女戦士。「三戦士」とは、 1)寡黙な「ホーガン」(浅野忠信が演じていました)、 2)女好きの「ファンドラル」、 3)大食漢の「ヴォルスタッグ」、 の勇者たちなのでした。 彼らの持つ武器は、それぞれ「メイス(鎚矛)」、「ブレード(刀剣)」、「ウォーアックス(戦斧)」と異なっています。 「家来は三人」の多くの場合、見た目はもちろん、その性格、能力、得意とする武器も、「三者三様」、違うのであります。 もう一つ、思い出しました。 コンピュータに守られたバベルの塔に住んでいる、超能力少年「バビル二世(1973)」です。 彼は地球の平和を守るために、三つの僕(しもべ)に命令するのです。 1)怪鳥「ロプロス」空を飛べ、 2)「ポセイドン」は海を行け、 3)「ロデム」変身!地を駆けろ、 といった具合に。 「空が得意」「海が得意」「地上が得意」。 これから判るように、三人(三体?)はそれぞれ異なる能力、得意な分野を持っていて、その3つの力を合わせる事で初めて「無敵」となるのです。 「一人では無力でも、三人揃えば無敵になる」という、「毛利元就」の「三本の矢」なのであります。 「家来は三人」。 それは「お供」であったり「同士」であったり「召使い」であったり「子分」であったり「僕(しもべ)」であったり、呼び方は様々です。 ですが、要するに主人公と一緒に行動し、主人公を助ける仲間なのです。 そして、「1人1人では頼りないが、3人揃えば頼りになる」のです。 作劇的に考えれば、3人の性格を考えるのは楽しい作業に違いありません。 3人の長所と短所は、物語を劇的に盛り上げてくれるでしょう。 そして、主人公の目的を果たした後、その「3人」が前と後でどう変わったかも見所の一つになるでしょう。 原始人の物の数え方は「ひとつ。ふたつ。たくさん」だと、聞いた事があります。 つまり、「3」は「たくさん」なのです。 また、俗に言う「三界」とは過去、現在、未来、この世の「全て」を表した言葉です。 「三種の神器」や「三傑」という単語から判るように、「3」は「代表的な」「全て」の意味が込められています。 突き進めば、「3」は「安定」や「調和」、「究極」や「永遠」等も、暗示しているのかも知れません。 「一汁三菜」 「三千世界」 「石の上にも三年」 「三位一体」 「三人寄れば文殊の知恵」 「駆けつけ三杯」 「女三人寄れば姦しい」 ん?後の2つは違うかー。最初も違うかー。 ※今回のエッセイは、「主人公がいて、三人の家来がいる」について考えて見たのであります。 端から三人が主人公の「三銃士」や「三バカ大将」、ハンナ・バーベラの「スパースリー」、「ゲッターロボ」等は除外したのでした。 (追加補記20170928)。 本エッセイを読んだ方から、「そう言えば、芥川龍之介の『犬と笛』という短編も、家来は三人の話でしたねえ」と教えてもらった事を思い出しました。 木こりの「髪長彦」が神様から、「嗅げ」「飛べ」「噛め」という不思議な三匹の犬を与えられる話です。 ネットの「青空文庫」にあるとても短い話なので、気になった方は一度読んでみる事をお勧めします。 |
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