SYU'S WORKSHOP
ESSAY VOL.162
「家来は三人」について

(2015年6月27日)


「家来は三人」なのであります。

例えば、どんぶらこっこ。



川上から流れてきた大きな桃を、洗濯に来ていたお婆さんが偶然ゲット。
家に戻ってパッカーンと切ったら、産まれて飛び出る桃太郎。
スクスク成長、勝ってくるぞと勇ましく鬼ヶ島に鬼退治。
途中で吉備団子に釣られて、

1)「犬」が仲間になり、
2)「猿」が仲間になり、
3)「キジ」が仲間になって、

やがて辿り着いた鬼ヶ島。
向かってくる赤鬼青鬼を千切っては投げ、千切っては投げ。
金銀パールたくさんのお宝を持ち帰ったとさ。
ご存じ「桃太郎」であります。

「家来は三人」という仕様に、私たちは幼少の頃から聞かされて育ってきたのであります。

次に聞くのは、この話ではないでしょうか。



唐僧の偉い坊さん三蔵法師が、天竺つまりはインドへ、ありがたい経典求めて旅に出る。
途中、旅のお供となったのが、

1)斉天大聖の名でも知られる石猿「孫悟空」、
2)破戒僧で豚の妖怪「猪八戒」、
3)天界から堕ちた人喰い化け物「沙悟浄」、

の三人なのでありました。
ご存じ「西遊記」であります。

「西遊記」ほど時代と共に様々な媒体で「リボーン」され続けている物語はありません。
小説や映画はもちろん、TVドラマやアニメや漫画、舞台や人形劇等々、ありとあらゆるジャンルから「西遊記」は出ているのです。

この前、駅前に出来た新しいパチンコ屋でも、「最新機!最胸伝奇 パイ遊記」と賑やかなポップ広告も出ていたのであります。
「パイ遊記」たぁ、心穏やかでは、いられないではありませんか。



「オズの魔法使(1939)」は、「ジュディ・ガーランド」主演の大昔のMGMミュージカル映画の傑作です。
原作小説は「オズの魔法使い」と「い」が付きます。
本作は、私の好きな「ロボットもの」としても傑作なのです。

カンザスの農場で暮らす「ドロシー」は、ある日、巨大な龍巻に巻き込まれ、魔法の国「オズ」へと運ばれてしまいます。
そこで、ドロシーは「懐かしの我が家へ帰る旅」に出るのです。
途中、仲間になるのは、

1)知恵のない「カカシ」、
2)心の無い「ブリキ男」、
3)弱虫の「ライオン」、

の三人でした。
こうして「足りないモノを抱えて悩む連中」の、不思議な道行きが始まったのです。

冒頭で書いた通り、本作は「ロボットもの」の傑作でもあり、「心を探すロボット物語」の嚆矢だと思います。
「鉄腕アトム(1951〜)」や「人造人間キカイダー(1972〜73)」の先達なのであります。
「何でボクは心が無いのかなあ・・・」と泣く「ブリキ男」は、いつ観ても私も泣いてしまうのでした。



「怪物ランド」の王子「怪物太郎」が、人間勉強のためにやって来たのが人間界。
そこで「あらま荘」というボロ・アパートの隣、古く大きな西洋屋敷に引っ越してきます。
その際、「怪物ランド」から召使いとして連れてきたのが、

1)怪物界の伯爵「ドラキュラ」、
2)月見うどんが大好き「狼男」、
3)心優しい大男「フランケン」、

の三匹(三人)でありました。
「怪物くん(少年画報1965〜69、少年キング1967〜69)(アニメ1968〜69、80〜82)」であります。

一番最初のアニメ主題歌によれば、「ハイざます!」「ウォーでがんす!」「フンガーフンガー!」なのです。
私は大人になってから、フランケンの「フンガー」が「空腹(der Hunger)」のドイツ語読みだと知って吃驚したのでした。



私が子供の頃は、海外アニメ「ハンナ・バーベラ」の全盛期でもありました。
「ドラ猫大将(1961)」「スーパースリー(1966)」「宇宙怪人ゴースト(1966)」「宇宙鳥人Uバード(1967)」「怪獣王ターガン(1967)」「大魔王シャザーン(1967)」「チキチキマシン猛レース(1968)」「スカイキッドブラック魔王(1969)」等々、幾つかの主題曲は今でも「そら」で歌えるのです。自慢じゃ無いけど。

「宇宙怪人ゴースト」はヒーロー物です。
両腕に「Uバンド」という超エネルギー発生装置を装着し、

1)「アラン」という少年と、
2)「ケイト」という少女と、
3)「ピッキー」という猿と一緒に、

宇宙を股に掛けた冒険を繰り広げるのでした。
「ヒーロー」が一緒に行動するのが「少年」「少女」「ペット」というのは、児童向け冒険物語の定番でありました。



「ラビリンス/魔王の迷宮(1986)」は、「ダーク・クリスタル(1982)」の「ジム・ヘンソン」が製作した、マペットと人間が共演するファンタジー映画でした。

「ジェニファー・コネリー」演じる少女「サラ」が、「デヴィット・ボウイ」演じるゴブリン王に連れ去られた、幼い弟を助け出すために、「ゴブリン・シティ」の迷宮へと入る物語であります。
その冒険の中で、

1)「ホグル」という欲深いゴブリンと知り合い、
2)「ルード」という毛むくじゃらの臆病な怪物と、
3)「サー・ディデュモス」という怒りっぽい犬の騎士と共に、

「ゴブリン城」へと乗り込むのでした。
本作は「オズの魔法使」がベースになっています。
その証拠に、「オズの魔法使」には「トト」という「ケアーン・テリア」が出て来ますが、それに呼応するように、本作には「マーリン」という「オールド・イングリッシュ・シープドッグ」が出てくるのでした。



近年のSF映画にも「三人の家来」が出て来ました。
アメコミ(マーベル・コミック)を原作とする「マイティ・ソー(2011)」」であります。

北欧神話の元となった宇宙の何処かにある異世界「アスガルド」。
そこの王家を守り、主人公「ソー・オディンソン」の戦友が、「レディ・シフと三戦士(ウォリアーズ・スリー)」でありました。
「シフ」は最強の女戦士。「三戦士」とは、

1)寡黙な「ホーガン」(浅野忠信が演じていました)、
2)女好きの「ファンドラル」、
3)大食漢の「ヴォルスタッグ」、

の勇者たちなのでした。
彼らの持つ武器は、それぞれ「メイス(鎚矛)」、「ブレード(刀剣)」、「ウォーアックス(戦斧)」と異なっています。

「家来は三人」の多くの場合、見た目はもちろん、その性格、能力、得意とする武器も、「三者三様」、違うのであります。



もう一つ、思い出しました。
コンピュータに守られたバベルの塔に住んでいる、超能力少年「バビル二世(1973)」です。
彼は地球の平和を守るために、三つの僕(しもべ)に命令するのです。

1)怪鳥「ロプロス」空を飛べ、
2)「ポセイドン」は海を行け、
3)「ロデム」変身!地を駆けろ、

といった具合に。
「空が得意」「海が得意」「地上が得意」。
これから判るように、三人(三体?)はそれぞれ異なる能力、得意な分野を持っていて、その3つの力を合わせる事で初めて「無敵」となるのです。

「一人では無力でも、三人揃えば無敵になる」という、「毛利元就」の「三本の矢」なのであります。



「家来は三人」。
それは「お供」であったり「同士」であったり「召使い」であったり「子分」であったり「僕(しもべ)」であったり、呼び方は様々です。
ですが、要するに主人公と一緒に行動し、主人公を助ける仲間なのです。
そして、「1人1人では頼りないが、3人揃えば頼りになる」のです。

作劇的に考えれば、3人の性格を考えるのは楽しい作業に違いありません。
3人の長所と短所は、物語を劇的に盛り上げてくれるでしょう。
そして、主人公の目的を果たした後、その「3人」が前と後でどう変わったかも見所の一つになるでしょう。


原始人の物の数え方は「ひとつ。ふたつ。たくさん」だと、聞いた事があります。
つまり、「3」は「たくさん」なのです。

また、俗に言う「三界」とは過去、現在、未来、この世の「全て」を表した言葉です。
「三種の神器」や「三傑」という単語から判るように、「3」は「代表的な」「全て」の意味が込められています。

突き進めば、「3」は「安定」や「調和」、「究極」や「永遠」等も、暗示しているのかも知れません。



「一汁三菜」
「三千世界」
「石の上にも三年」
「三位一体」
「三人寄れば文殊の知恵」
「駆けつけ三杯」
「女三人寄れば姦しい」

ん?後の2つは違うかー。最初も違うかー。


※今回のエッセイは、「主人公がいて、三人の家来がいる」について考えて見たのであります。
端から三人が主人公の「三銃士」や「三バカ大将」、ハンナ・バーベラの「スパースリー」、「ゲッターロボ」等は除外したのでした。

(追加補記20170928)。
本エッセイを読んだ方から、「そう言えば、芥川龍之介の『犬と笛』という短編も、家来は三人の話でしたねえ」と教えてもらった事を思い出しました。
木こりの「髪長彦」が神様から、「嗅げ」「飛べ」「噛め」という不思議な三匹の犬を与えられる話です。
ネットの「青空文庫」にあるとても短い話なので、気になった方は一度読んでみる事をお勧めします。




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