SYU'S WORKSHOP
ESSAY VOL.183
「カニ一匹まるごとTHEラーメン」
について

(2020年6月6日)


「カニ一匹まるごとTHEラーメン」は「かに いっぴき まるごと ざ らーめん」と読みます。
大昔、西新橋にある会社に勤めていた頃の話です。



今でもあるかどうか判りませんが(調べたら出版社を替え出てました)「東京ウォーカー」のラーメン特集で、会社近くのラーメン屋で「カニ一匹まるごとTHEラーメン」なるモノを出し始めた事を知ったのです。
そして、さっそく仕事仲間数人と食いに行ったのでした。

私の仕事は一度始まると、同じチームで数日から数週間一緒に過ごす事が多いのです。
そして始まると数日から数週間は過酷な日々が続くのです。
会社は西新橋にありましたが、一週間、会社から一歩も外に出ない事もありました。
その間の食事は「出前」を頼む事が多く、徹夜仕事が続き、深夜というか早朝、疲れ切ると会社の床に「カポック(発泡スチロールの5センチ厚の板)」やら「プチプチ(正式名称は気泡緩衝材)」を敷いて、据え置きの小汚い毛布を掛けて気を失うように寝るのです。
今で言うなら明らかに「超ブラック企業」であります。

そんな仕事が続き、時々爆発しそうになる時、「バカバカしい食事」で憂さを晴らすのです。
「スッポン鍋」を食いに行った事もありました。
あれ、「甲羅」も食えるのですねえ。
「生き血」を入れた酒を飲み干し、必要以上に身体が熱くなった事もありました。

これは一人の時ですが、真夜中、近所の「24時間営業の立ち喰いそば屋」(当時、新橋にはそんな立ち喰いそば屋が何軒もあったのです)を三軒立て続けに「はしご」して(三軒とも「天玉そば」を)、会社に帰ってきてから吐いた事もありました。
そうそう、「カニ一匹まるごとTHEラーメン」の話でした。

大方の予想通り(東京ウォーカーで写真は見ていましたが)、こんなのでした。



まず何より食いづらい事 夥(おびただ)しい。

確かスープは「みそ味」ベースでしたが、スープと「カニ」の旨みが一体化しているワケでも無く、「みそラーメン」と上に乗った「カニ」は全くの別物。別々の料理って感じ。

カニの足の中身をほじくり出して食い、そのカニの足を持ち上げて下のラーメンを啜る。
殻置きの小皿はあったと思うのですが、実に食いづらいモノなのでした。
一緒に行った会社の数人は、半分ぐらいカニを残していましたっけ。
でも。

とっても面白かったなあ!


このバブリー時代の申し子のような食い物、そのラーメン屋はもうとっくに無くなっていますが、ネットで調べて見ると「ある所にはある」みたいなのでした。




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