十数年前、「脳梗塞」で一週間入院するまで、私は重度の「ハードスモーカー」でした。 大昔、私が務めていた会社は東京の西新橋二丁目にありました。 地下鉄 東京メトロ(当時は営団地下鉄)の「虎ノ門」で降り、歩いて10分ぐらいの場所にありました。 歩く途中に「タバコ屋」があり、毎日決まってそこで「キャビン・マイルド」を3つ買ってから、会社に到着するのです。 包装違いでソフトパッケージが260円、ハードパッケージが280円、3箱買うと1000円でおつりが来るのでした。 一箱は「20本入り」で、私は毎日20本×3(60本)を一日で吸っていたのでした。 勤務中は次から次へと、常時タバコを吸っていました。 今では考えられない世の中でした。 会社の中でも仕事先でも、喫茶店はもちろん街中でも、いろいろな場所に「灰皿」が置かれていたのです。 通勤電車の中にはさすがに「灰皿」はありませんでしたが、駅のホームには必ず「灰皿」がありました。 これは今では信じられない方もいらっしゃるでしょうが、新幹線の中でも各座席の横に小さな「灰皿」が必ずあったのでした。 (信じられないと言えば、飛行機、国内線でも海外線でも座席の横には小さな「灰皿」が付いていた!) のべつまくなく、しょちゅうタバコを吸っていた私は、もはや「ハードスモーカー」の上行く「チェーンスモーカー」だったのです。 「チェーンスモーカー」とは、鎖のように繋がるように、常時タバコを吸っている人の事なのでした。 私が「スモーカー・喫煙者」になった原因の漫画が二つあります。 萩尾望都の「毛糸玉にじゃれないで」と、大島弓子の「アポストロフィーS」です。 初出は1972年の週刊少女コミックと、1976年のJOTOMO(元、女学生の友)」です。 「毛糸玉にじゃれないで」はこおいう話です。 主人公「小川むつき」は、高校受験を控えた中学三年生。 裕福な家庭に育つ彼女は、深夜の受験勉強の際、眠気覚ましのためにいつもタバコを吸うのです。 70年代、中学生の女の子がタバコを吸う描写は(彼女は不良ではなく普通の女の子なのに!)、とても衝撃的でした。 タイトルは彼女が学校帰りに拾ってきた「子猫」によって、何の疑問もなく過ごして来た日々に、少しづつ変化が起こるお話でした。 「アポストロフィーS」はこおいう話です。 仲良し4人組「かすり」「咲也」「田村浪」「司馬乱」はK大受験を目指す高校三年生。 この漫画は私の好きな「青春群像劇」なのです。 「司馬」は1年留年し転入して来た青年で、いつもメンソール(ハッカ入り)をタバコを吸っています。 「今日は何本目ですか?そのハッカ入りのタバコ」「十万本はゆくよ。かるく。あはは、13の時からの総数だよ」 「メンソールのタバコ、すいすぎると再起不能、非生産者におちいるんですって。人の話によると」 「おれは咲夜姫、非生産者になりたいんだ」 1年留年した18歳の「司馬」が、5年前の13歳から吸っていて十万本だとすると、1年間2万本。 2万本を1年365日で割ると、1日「54.79本」。 私の最盛期が一日「60本」でしたから、これは勝った!とか思うワケです。 しょうもない。 表題の「アポストロフィーS」は英語で所有を表す接語「's」の意味で、登場人物4人の関係が高校生活最後の数週間で、いろいろ変化してゆく物語でした。 大昔、私は大学時代「漫画研究会」というサークルに入っていました。 それまで少年漫画に出てきた「タバコ」は単なる「不良」を意味する小道具でしたが、それがある時、一部の少女漫画家たちによって違う意味合いを持つようになったのです。 私はそれは「文学性」だと思っているのです。 それらの漫画の中の「タバコ」が、凄くカッコ良く感じられたのでした。 これが私が「スモーカー・喫煙者」になった原因なのでした。 今でこそ漫画の「タバコ」で、すぐ思い浮かべるのは、ルパン三世の「次元大介」とワンピースの「サンジ」ぐらいですが、昔の漫画と「タバコ」はもっと密接に結びついていました。 多くの漫画家の自画像(男性作家)では、みんな「咥えタバコ」姿で描かれていたのです。 「吾妻ひでお」が、その最たるもの、だと思います。 自画像だけではなく、彼の漫画には、登場人物たちの多くが「咥えタバコ」で「歩きタバコ」していたモノでした。 「咥えタバコ」で「歩きタバコ」で思い出す話が一つあります。 私の会社が「西新橋」にあった時代。 昼飯を外で食い、会社に戻ろうと日比谷通りの横断歩道で信号待ちをしていた時、どうも私の周囲が「モクモク」と煙たくなったのです。 「何だろう?」と見回しすと、私のコートの裾が燃えていたのでした。 「歩きタバコ」の火が、自分のコートの裾に燃え広がっていたのす。 あの時はビックリしたなあ。 私は「チェーンスモーカー」で、外でも家でも、しょっちゅうタバコを吸っていました。 家でゲームやテレビ見ている時でもスパスパ。 趣味のプラモデル作っている時でもスパスパ。 今考えるとこれは恐ろしいのですが、接着剤を使ったり、塗装でラッカーをエアブラシしている時でもスパスパしていたのです。 咥えタバコで作業をしている際、すでにタバコを咥えているのに、無意識で二本目のタバコを取り出していた事もありました。 一体何本吸おうと思っていたのか。 こうして因果応報。 十数年前には高血圧になり、脳梗塞に成ってしまったのです。 その時に禁煙し、今では完全にタバコは吸っていないのでした。 最後によく知られた有名なジョークを書いておきます。 「タバコ吸ってもよろしいですか?」 「どうぞ。ところで一日何本ぐらいお吸いになります?」 「二箱ぐらいですね」 「何年ぐらい?」 「30年ぐらいですかね」 「あそこにベンツが停まっていますね」 「ええ、停まっています」 「もし、あなたがタバコ吸っていなければ、あれぐらい買えたんだですよ」 「あれは私のベンツですけど・・・」 ちなみに、私はベンツは持っていないのであります。 |
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