SYU'S WORKSHOP
ESSAY VOL.41
「北極と南極」について

(2003年1月25日)


北にあるのが北極。南にあるのが南極。
当たり前ですが。
氷の下が海なのが北極。氷の下が地面なのが南極。
シロクマがいるのが北極。ペンギンがいるのが南極。
最低気温が−30℃なのが北極。最低気温が−80℃なのが南極。
氷の厚さが20メートルほどなのが北極。
氷の厚さが2キロほどなのが南極。

今回は、それ以外に私が知っている北極と南極に起こったSF映画的「異常な出来事」に関してのエッセイなのであります。


それではまず北極から。


「遊星よりの物体X(1951)」の舞台は北極でした。
(ちなみに、リメイクされた「遊星からの物体X(1982)」では南極基地という設定でした。映画の原作であるジョン・W・キャンベル・ジュニアの1930年代の傑作SF小説「影が行く」でも南極という設定でした)。
ある日、北極に謎の飛行物体が落下。極地科学研究所の調査により氷の下から空飛ぶ円盤が発見されます。
そして、その中から氷づけの謎の生物が取り出され、その研究所に持ち帰った事により、恐ろしい惨劇が起こるのでありました。

「原子怪獣現る(1953)」は、北極の水爆実験で蘇った古代生物のお話。
映画の中で「リドサウルス」と呼ばれるイグアナに似たこの怪獣は、人形アニメーター「レイ・ハリーハウゼン」によって命を吹き込まれ、ニューヨークの街中で大暴れするのであります。
この映画は「ゴジラ(1954)」の元ネタになったと言われていますが、それよりももっと直系の子孫が・・・、

「大怪獣ガメラ(1965)」です。
これは大映初の怪獣映画。
某国の原子爆弾搭載機の墜落事故により、北極の氷山が崩れ、その中から現れたのが巨大な甲羅を持った怪物でした。
エスキモーの酋長の持つ伝説の石により、それはいにしえのアトランティスの時代より氷山の中に閉じ込められていた「悪魔の使い、ガメラ」である事が判明します。

「キングコングの逆襲(1967)」では、悪の天才科学者「ドクター・フー」によって密かに北極の秘密基地で「メカニコング」が製造されていました。
彼はその巨大怪獣型ロボットを使い、北極の地下に存在する核物質「エレメントX」を掘り出そうとしていました。
この様に、北極から怪物がやって来るという設定の映画はいくつかあるのですが、反対に映画のラストで北極に怪物を捨ててしまう、という作品もあります。
それは・・・、

「絶対の危機(1958)」であります。
これはあのスティーブ・マックイーンがデビュー間もない頃に主演した映画で、「マックイーンの絶対の危機」というタイトルでも知られています。
また「人喰いアメーバの恐怖」という副題で記憶している人も多いと思います。
宇宙からやって来たゼリー状の不定形怪物が人々を襲うというお話。
この怪物は原題から「ブロブ(THE BLOB)」とも呼ばれます。
軍隊の機関銃も大砲も効かないブロブの弱点は寒さでした。
と言うワケで、最後は凍らせて北極に捨てられてしまうのでありました。
「○○の危機」と言えばもう一つ・・・、

「地球の危機(1961)」という作品もありました。
後にテレビシリーズにもなった「原潜シービュー号」が初めて登場する海洋SF映画です。
最新鋭の原子力潜水艦「シービュー号」は北極での試運転中、地球を取り巻く放射能帯「ヴァンアレン帯」の異常に遭遇します。
隕石の影響によりヴァンアレン帯が真っ赤に燃えているのでありました。
このままでは地球が燃え尽きてしまう・・・。
シービュー号は地球を救うべくヴァンアレン帯に向けて一発の核ミサイルを発射するのでありました。
地球を救う者、と言えば・・・、

「スーパーマン2 冒険編(1980)」では、スーパーマンの隠れ家というか氷の要塞があるのが北極なのでありました。



それでは次に南極では。


「吹雪に包まれた南極大陸。そこには、まだ分からない、いろいろな謎があります。今夜は南極基地に起こった、恐ろしい事件を皆様にご案内いたしましょう」。
このナレーションで始まるのが「ウルトラQ 第5話(1966)」の「ペギラが来た!」です。
日本の南極観測基地を襲うこの翼を持つ怪獣ペギラの身長は50メートル。
口からはマイナス130度の冷凍光線を吐き、その際、あらゆる物を宙に舞い上げる「半重力現象」を巻き起こすのでありました。
この「半開き」の眼差しを持つ怪獣は、今でも私の大好きな怪獣の一人(一匹)なのであります。
また、南極には「マグマ」という怪獣も棲んでいました。
その怪獣が登場するのが・・・、

「妖星ゴラス(1962)」です。
これは東宝SF映画の傑作です。
この映画では、地球の質量の6000倍という黒色矮星ゴラスとの衝突を避けるため、人類史上最大のプロジェクト「南極計画」が発動されます。
それは南極大陸全体に大量の巨大「ジェット・エンジン」を埋設し、その推進力により地球自体の軌道を変えるというモノでした。
この様に、南極では壮大な「極秘プロジェクト」がいろいろと進行しているのでした・・・。

大ブームを巻き起こし、その後、いろいろな亜流を生み出したTVアニメーションの傑作「新世紀エヴァンゲリオン(1995〜1996)」。
これも南極から始まる物語でした。
西暦2000年、南極で発見された「使徒」と呼ばれる人型の物体。
その調査中に起こった謎の大爆発により南極大陸は蒸発。
地球は異常気象に見舞われ、人類の半分が絶滅してしまいます。
これが後に「セカンドインパクト」と呼ばれる全ての出来事の発端だったのでした。
また・・・、

「X-ファイル ザ・ムービー(1998)」では、南極の地下にエイリアンの秘密研究所があるのであります。
FBI捜査官のモルダーは、そこで「人類の未来」に関わる重大な事実を知ることになるのであります。
「人類の未来」と言えば・・・、

「復活の日(1980)」。
角川の大作SF映画です。
生物兵器として開発されていたウィルスが事故によって全世界に蔓延。
その時たまたま南極にいた各国の探検隊863人を除いて、地球上の全人類が絶滅してしまうという物語でした。
最後に、南極と言えば、この作品を上げないワケには行かないでしょう。それは・・・、

「狂気山脈(1931)」。
これは映画ではなく小説ですが、「魔境大陸・南極」を描いた傑作古典なのであります。
多くのカルト信者を持つホラー小説の大家「H・P・ラブクラフト」の中編小説です。
「ミスカトニック大学」の南極調査隊は、南極大陸の奥地で太古の地球にやって来ていた異生物の超文明の痕跡を発見する事になります。
いわゆる「クトゥルー神話」と呼ばれる物語。
彼らはそこで「テケリ・リ」という奇妙な叫びを発する怪物たちに襲われ、ある者は死に、ある者は発狂するという災難に見舞われるのでありました。



雪と氷に閉ざされた極寒の地、北極と南極。
人類はその地の発見と同時に、数多くの探検隊を派遣し、また様々な空想を膨らませてきました。
18世紀の天文学者ハレーは北極には地球内部に通ずる巨大な穴があると唱えました。
「地球空洞説」であります。
北極のオーロラは、地球内部の光がその穴から漏れて発生するのだ、と考えたのです。
また、19世紀には、アメリカの軍人シンメスがこの穴を探す探検隊を組織しようと考えました。
また、20世紀、ヒットラー率いるナチス・ドイツがこの穴を探そうとしていた、という説もあります。
ヒットラーの自殺は実は嘘で、南極の秘密基地に逃亡したのだ、という話もありました。
もちろん、これらの話は現在では皆「トンデモ系」の根も葉もない「妄想」とされていますが、それだけ、北極と南極という異境の地に対して人々が「ロマン」をかき立てられたという証でもありましょう。

異境の地、北極と南極。
全てのモノを凍らせる白き世界、北極と南極。
夏よりも冬が好き、暑いよりも寒い方が好きな私にとって、一度は訪れてみたい場所なのであります。
まあ、そんな機会はほとんど無いでしょうが。
でも、もし。
もし、北極か南極、どちらかに行けるとしたら・・・。

私は南極を選ぶのであります。
それは「シロクマに遭遇するよりもペンギンに遭遇した方が楽しそう」という理由以外に、私はガメラよりもペギラに出逢いたいから、なのであります。



目次へ                               次のエッセイへ


トップページへ

メールはこちら ご意見、ご感想はこちらまで