SYU'S WORKSHOP
ESSAY VOL.47
「ルーカスのスターウォーズに見るTHX」
について

(2003年5月29日)


ジョージ・ルーカスは1944年の5月14日、サンフランシスコの南の小さな町「モデスト」で生まれました。

などという文章で始まった本エッセイは、別にルーカスの半生を語ろうとするモノではありません。


その20年後、彼はロサンゼルスにある南カルフォルニア大学「USC」の映画学科に入学します。
そこで映画の基礎と実践を学んだ彼は、いったん卒業した後、再び大学院へと戻り、「海軍の映画製作者養成クラス」の担当教員になります。
実は、ルーカスには一つの目論見があったのです。
それは、「実習授業」という名目で大学からフィルムと機材を提供してもらい、自分の個人的な映画を作ってしまおう、というモノでした。

そして完成したのが17分の短編映画「THX-1138:4EB(1967)」でした。

これは近未来、認識番号「THX-1138:4EB」と呼ばれる男の、管理社会からの脱出を描いたSF映画でした。
この暗証番号の様な映画のタイトルは、当時ルーカスが好きだったカナダの実験映画「2187」へのオマージュでした。
この作品がハリウッドの目に留まる事になります。

1971年、学生映画であった「THX-1138:4EB」は、フランシス・フォード・コッポラのプロデュースにより、ルーカス初の商業用長編映画「THX-1138」としてリメイクされました。

プロの道を歩む切っ掛けとなった学生映画「THX-1138:4EB」。
そして、初のプロ監督作品「THX-1138」。
ルーカスにとって、この記念すべき「THX-1138」というタイトルには特別の思い入れがあったに違いありません。


彼のプロ監督第二作目「アメリカン・グラフティ(1973)」は、60年代のアメリカの片田舎での若者たちの一夜の出来事を描いた青春物語でした。
「ルーカスはデビュー作である「『THX-1138』に思い入れがある」という私の持論。
それは、この「アメリカン・グラフティ」において、主人公の一人「ジョン・ミルナー」が乗る黄色い車「'32 フォード・デュース・クーペ」のナンバー・プレートに、「THX138」の文字を発見した時に確信に変わりました。
ルーカスの密かな自己パロディ、いや自己オマージュ。
公開当時、劇場の中で、その「THX138」と書かれたナンバー・プレートを見て、「おおっ!」と声を上げた「ルーカス・オタク」は私だけではありませんでした。

また、近年、ルーカス・フィルムが開発した「映画の音響・環境システム」のブランド名に「THX」という名を与えたのも、これ至極当然なのであります。
ルーカスは「THX」というタイトルに思い入れがあるから。


そして、監督第三作目「スターウォーズ(1977)」です。
本エッセイは、ここからが本論です。


私はこの記念すべきSF映画を観る前に、「きっと、この映画でも何処かに『THX』が出てくるぞ。ルーカスだから」と密かに期待していました。
しかし、「昔々。遥か彼方の銀河系で」で始まる「異世界」を描いたSF映画において、英語のアルファベットは「禁じ手」でした。
我々の住んでいる「地球」とはまったく異なる時代と世界の物語であったからです。
もっとも、「デス・スター」内のトラクター・ビームのコンソールに「POWER」と「英語」で書かれていたという有名な「演出ミス」はあったモノの、それ以外に英語のアルファベットがこの映画に登場する余地はなかったのです。

が。


私は発見しました。
スターウォーズにおける「THX」を。



「THX」の「X」。
これは共和国軍の戦闘機「Xウィング」で、文字通り前から見ると「X」の文字になっています。
「THX」の「H」。
これは帝国軍の「タイ・ファイター」。
これも前から見ると「H」の文字になっているのが判ると思います。
そして、「THX」の「T」。
これは少々判りにくいのですが、共和国軍の「Yウィング」なのです。
名称こそ「Y」となっていますが、このメカを真上から見下ろすと「T」の文字になっている事がお判りになると思います。
そう、ルーカスは「スターウォーズ」において、大好きな「THX」の文字をみんな「宇宙船」にして、宇宙空間に飛び回らせたのでした!


という説を、私は「スターウォーズ」の公開から20数年間、事あるごとに周囲の人間に力説して来たのですが、残念な事に誰も相手にしてくれません・・・。
しくしく。


いや、マジにそう思っているんですけども。



(追加補記)
「未確認情報」ながらも、いくつかルーカスの「THX1138」に関する、その後知り得た情報をいくつか。
1)「スタンリー・キューブリック」の「2001年 宇宙への旅(1968)」において、「HAL9000」と並ぶディスプレイの中の表示に「THX SWGL 1138」という表示を見つける事が出来る。
ルーカスのデビュー作はこれにオマージュを捧げたと言う説。
2)一番最初の「スターウォーズ(1977)」において、「レイア姫」を捕ら監禁したデススターの部屋番号が「1138」である。
「prisoner transfer from cell block 1138(囚人をセルブロック1138から移送せよ)」と言っている。
3)「SWエピソード1」において、「ジャージャー・ビンクス」がラストバトルで突き倒したドロイドのバックアップ上部に「1138」のナンバーが見える。





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