SYU'S WORKSHOP
ESSAY VOL.51
「今日の名台詞 その(6)」
について

(2003年8月17日)


私は昔から本や漫画、テレビや映画などに登場する「名台詞」を日記に書き留めておくようにしていました。

と言うワケで、今回も昔の日記からそれを抜き出してご紹介するのであります。

コメントはその当時のモノ。
※印付きのコメントは、今の私の補足説明です。

またまた前後の脈略無くズラズラズラと並べてみました。



「夕日が見える席がいいな」
「そうだね」
「夕日が見える席は今いっぱいですので」
「あそー」
「夕日を見ている人が見える席やったらあるでぇ」

森下裕美「ここだけのふたり」より。
リゾート地のお洒落なレストランに入って繰り広げられる会話。
※ほとんどの人は「夕日が見える席に座っている人を見られる席」に座っているモノなのであります。
人生も一緒・・・。
かも。


どどどどど。
「滝っていうのは 滝っていうのは なんだかすごく 無駄使いなんだなあ」

いがらしみきお「ぽのぽの」より。
※人は時々、「無駄な事」「意味ない事」に深い感銘を覚えるのであります。
壮大な「無駄遣い」をしてみたいものです。


「どこまで続くんだろう。 どこから始まるんだろう」
西原理恵子「ゆんぼくん」より。
※実は私、西原理恵子は「微妙なところで今ひとつ」、好きになれないのであります。
なんだろ、「無頼漢」気取っているところが好きなじゃないのかなあ。
上手い、才能のある人だとは思っているのですけども。


「こういうモンだよ、何一つ、誰一人無駄なモノなんかないんだよ」
根本敬「ガロ9」より。
※「特殊漫画家」根本敬は、絵も内容も「必要以上に汚い」漫画家ですが、でも、「真理」を追求している作家だと思います。
最近、漫画描いているのかな?


「夏だ!飛び出せ!でも、どこに?」
「LOGIN・16・17」より。
※私は昔から夏が嫌いなのであります。
その理由は「極端な暑がり」である事なのですが、も一つの理由はこの「夏なんだから何かしなくっちゃ・・・。でも、何を・・・?」という夏特有の「焦燥感」にもあるのです。


「墨で書かれた虚言は、血で書かれた事実を隠すことはできない」
迅魯。
※歴史について語られた言葉。


「小石は下流に流されますが 大石はときとして上流へ昇ってくるのです」
つげ義春「会津の釣り宿」より。
※私は、つげ義春の「旅行漫画」「温泉漫画」が大好きなのであります。
台風時の山の渓流では、実際にそおいう事が起こるのだそうです。


「All work and no play makes jack a dull boy」
スタンリー・キューブリック「シャイニング」より。
※「仕事ばかりで遊ばないジャックは今に気が狂う」。
ジャックの妻ウェンディが、この文章で埋め尽くされたタイプ用紙を発見するシーンが、もの凄く怖いのであります。
カメラ下からアオリで、タイプライターとそこにセットされたタイプ用紙。そのタイプ用紙の向こう側に、驚愕に歪むウェンディの顔が段々と見えてくるのです。
このシーンのレイアウトは、「2001年」のモノリス越しに昇る太陽の場面に似ています。
そう言えば、音楽も、そのモノリスのシーンでかかる音楽に、ちょっと似ているのであります。


「眠ってしまえば・・・、区別はつかない」
サミュエル・フラー監督「ショック集団」より。
眠ってしまえば、殺人者であろうが、精神異常者であろうが、普通の人と区別がつかない、という事らしい。
※「ショック集団」は精神病院を舞台にしたスリラー映画です。


「ここにきて、どのくらいになります?」
「60ケースですよ」とグラントは答え、怪訝な顔のモリスを見て、その意味を説明した。
「ここではビールで時間を測るんです。6月に発掘をはじめたときには100ケースありました。そのうちの60ケースを消費したわけです」

マイクル・クライトン「ジュラシック・パーク」より。
モンタナ州スネークウォーターの荒れ地で恐竜の化石発掘をしているグラントの所に訪ねてきた、環境保護局ボブ・モリスに対して。
※小説にはこの様な「何かの使用量で時間の経過を計る」という描写がよく出てきます。
例えば、村上春樹の「羊をめぐる冒険」においても、バーの床に積もった「落花生の殻」で主人公たちは時間を計っていました。
なかなか洒落た表現だといつも感心するのであります。


「それにしては、あまり動転していないようじゃないか」とマルカムがいった。グラントはかぶりをふった。
「この世界では前から議論されていたことだ。こんな日のくることはおおぜいが予想していた。しかし、まさかこんなに早いとは・・・」
「人間とやつはみんなそうだ」マルカムが笑いながらいった。
「いつかはそうなるとわかっていながら、そんなに早くそうなるとは思ってもいない」

マイクル・クライトン「ジュラシック・パーク」より。
ジェラシック・パークの恐竜を見て、主人公の古生物学者グラントに数学者マルカムが言うセリフ。
※「ジュラシック・パーク」、私は映画よりも原作小説の方が面白かった「派」です。
ちなみに、マイクル・クライトンで一番好きなのは「アンドロメダ病原体」。これは映画も面白かったなあ。


「人はまず、自分に理解できないものがあるということを理解する必要がある」
マイクル・クライトン「ジュラシック・パーク」より。
シニカルな数学者イアン・マルカムのセリフ。
※昔のSF映画では、この「自分に理解できない事象を決して認め様としない」頭の固い「軍人」やら「科学者」が、まず真っ先に宇宙人やら怪物にやられちゃうモンなのであります。


「あいつが悪いわけじゃない」とティムはつぶやいた。
「なにいってんの。あたしたちを食べちゃおうとしたのよ。悪くないわけないじゃない」
「あれは肉食恐竜だからな。肉食恐竜としてはあたりまえのことをしただけだ」

マイクル・クライトン「ジュラシック・パーク」より。
恐竜好きの兄ティム・マーフィーと妹レックス・マーフィーとの会話。
※映画では「姉と弟」だった子供が、原作では「兄と妹」なのですね。
また、二人の名字が「マーフィーの法則」を思い起こす「マーフィー」なのも興味深いところであります。


「ここでは誰も彼もが気違いだからな。ぼくも気違いだし、お前さんも気違いさ」
「不思議の国のアリス」のチェシャ猫のセリフ。
※チェシャ猫は私が大好きなキャラクター。ピンクの縞模様の身体がなかなかオシャレなのです。


「私は戦争がきらいだ。世の中から戦争がなくなるまで戦うぞ」
「LOGIN 19」より。
※本末転倒・・・。


「物語は、別の物語を呼び寄せる」
NIFTY「MISTYフォーラム」より。
※なかなか格好良いセリフです。


「もうひとつ、忘れてはならないことがある。これは私の意見だが、『悪役』は、ほんの少しの哀感(ペーソス)をにじませて死んでゆくことが肝心だ。大抵の映画のなかで私たちはそれを実行している」
「コンプリート・レイ・ハリーハウゼン」より。
人形アニメーター界の大御所「ハリーハウゼン」のセリフ。
※彼の特撮映画に登場するクリーチャーたちが、良いヤツも悪いヤツもみんな「愛らしい」のは、単に「よく動いている」からではなく、ちゃんと「良い芝居している」からだと思います。


「航空の父」と呼ばれるイギリスのジョージ・ケイリー卿は、飛行の原理を推力と揚力にわけて考察し、実証的研究に先鞭をつけた。
彼は1849年、三葉グライダー「オールド・フライヤー」に10歳の少年を乗せ、数ヤードの距離を浮揚させた。
さらに4年後、御者を使った実験では、500ヤードの持続滑空飛行に成功している。
その最古のパイロットの言葉。
「旦那さま、わたくしの役目は馬を御することでございます!」

出典不明。
※この最古のパイロットのセリフ、彼の狼狽えぶりを思うと、とても可笑しいのであります。


「おばあさんは川に選択に」
※これは昔、職場の後輩が言ったセリフです。
おばあさんは何を選択したのかなあ?


「真の魔法はしなけらばならないことだけをすることにある」
アーシュラ・K・ル・グイン「ゲド戦記最後の書、帰還」より。
※ファンタジー作家たちは自作の中で、「魔法」に様々な「制限」を設けています。
「魔法は無制限に使えるパワーではない」とするためです。
これを単純に記号化したのが、コンピュータ・ゲームでの「MP」という概念です。
ちなみに、「MP」と聞いて「コンバット」を思い浮かべるのは、かなりの「おじさん」です。


「大切なのは、何を知っているかだろう、シビル・・・。土地や金より、生まれより、情報さ。すごく洒落てる」
ウィリアム・ギブスン&ブルース・スターリング「ディファレンス・エンジン」から、ミック・ラドリーのセリフ。
※「ディファレンス・エンジン」は私の好きな「スチーム・パンク」SF小説です。
もの凄く大ざっぱに19世紀から現在までのSFのトレンドを見てみると、「技術→科学→情報」となっているのですね。
多分。


「でも、君が俺たちに聞かせてくれた理論についての話は覚えているぞ。あの骨にどういう意味があるのか教えてくれた。『形態は機能に従う』。『最適条件の者が生き残る』。新しい形態が先頭に立つのさ。最初は奇妙な形に見えるかもしれんが、造物主がそれを古い形と公明正大に比べてくださり、原則として正しいものなら、世界は新しい形のものだ」
ウィリアム・ギブスン&ブルース・スターリング「ディファレンス・エンジン」から、マイクル・ゴドウィンのセリフ。
※「形態は機能に従う」とは格好良い言葉です。
SF映画に登場する全てのガジェットは、この法則に則っているべきなのですが、時々、「そりゃないだろ」というデザインが出てきたりするんですね。
で、SF映画なんてモノは「ケレン味」で出来ていますから、嘘は嘘でも良いのですが、その嘘が上手くつけていない映画は、やはり観ていて辛いワケなのであります。


三木(演出家)「個人的に西部劇が好きで、シティボーイズでそれに近い感じが出せたらっていうのと、なんとなく、時代の風は西に向いているって感じがあって」
きたろう「だいたい、南に行くっていうと遊びに行くみたいだし、北に行くっていうと実験に行くみたいだし、東に行くとインテリがいそうだもんな」

シティ・ボーイズの芝居「愚者の代弁者、西へ」。
何故このタイトルを付けたか?というインタビューに応えて。
※きたろうの「南北東西」の捉え方が、まことに的確で秀逸だと思うのであります。


「ねえ転入生 なぜいつもそう雰囲気が深刻なんです まるで世界がきょうでおしまいみたいに」
「きょうはあしたの前日だから・・・ だからこわくてしかたがないんですわ」

大島弓子「バナナブレッドのプティング」より。
※「きょうはあしたの前日だから」というフレーズが、いかにも大島弓子チックなのであります。


「わかりやすい結論はなぜか説得力はない」
「COMIC アレ!」、荒井三恵子の文章より。
※荒井三恵子は雑誌編集者。
人はいつも「理屈」や「ご託」や「意味」を欲しています。
本当は、すごくシンプルな言葉に真実があるのかも知れないのに。


「私はピータースンをまねようとした。表情を見せまいとした。さいわいなことに、医者はそういうことに多くの習練を積んでいる。患者が一晩に十回性交を行うといっても、自分の子どもを刺し殺す夢を見るといっても、毎日ウオッカを一ガロン飲むといっても、驚いた表情を見せないように訓練されている。どんなことにも驚かないのが医者という職業の秘訣の一つである」
マイクル・クライトン「緊急の場合は」より。
※医者に診られていて、「あれ?」と言われる事ほど恐ろしい事はないのであります。


「わたしの友人に、医者はみんな、本質的に純真だといっている男がいます。あなたは純真とは思えませんね」
「それはほめたのですか」
「いや、観察です」

マイクル・クライトン「緊急の場合は」より。
※「観察こそ全てだ」と常日頃言い続けている私の大好きな人物がいます。
そう、かのシャーロック・ホームズ氏です。


「現在は理性と道理の時代だぞ。そのような魔法なぞ、信じない!」
「我々もさ。これは魔法ではなく科学だ」

「タイムトンネル、恐怖の政治」より。
フランス革命の時代から「タイムトンネル」によって現代に転送されてきた男と、タイムトンネルの所長との会話。
※「タイムトンネル」は私の大好きなSFテレビドラマ。
転送されてきた男は所長とそっくりの顔をしていて、実は所長の祖先なのでした。
この会話でおもしろいのは、「現在は理性と道理の時代だ」と言うのが18世紀の世界から現代に連れて来られた男の方、という事にあります。
この会話、アーサー・C・クラークの「高度に発達した科学は魔法と区別がつかない」という名セリフを思い出します。


「生まれるのが本当に50年先だったらよ、撃たれても感じねえはずだ。生まれるまでは、な」
「タイムトンネル、ビリー・ザ・キッド」より。
ビリー・ザ・キッドが20世紀からやって来た二人の科学者、ダグとトニーに拳銃を突きつけながら言うセリフ。
※これも格好良いセリフです。
私の好きなSF、その中でも「タイムトラベル物」は名台詞の宝庫です。
いや、宝庫であるべきなのです。
その理由は・・・、あ、これはいつかエッセイで書こうっと。


「期待と不安と沈黙」ーー真夜中にベルが鳴る。
そのとき、心配性のA子は、
「もしかして実家から?お父さん 体弱いから まさか・・・」
楽観的なB子は、
「もしかしてあの人?もういちどやり直そうとか?」
いたずら電話が頭にくるのは単に迷惑だからではない。

秋月りす「OL進化論」より。
※「余計な心配」と「余計な期待」。
それが裏切られた時、傷が深いのは「余計な期待」の方なのであります。


「体験というのはおおむね、理解や認識を深める契機であると同時に、同じ分量だけ誤解というか、一種の偏見を生むんです。体験するということは絶対のものではないので、体験して何かがわかる同じ分量だけ、何かがわからなくなるんです。そう思っておけば間違いない」
押井守「アニメージュ1月号」より。
※何事も「知れば知るほど分からなくなる」のであります。
最後の「そう思っておけば間違いない」というセリフが、いかにも押井守チックです。


「明日は明日の風邪をひく」
「セーラームーンR」より。
※素晴らしい。
オリジナルの「明日は明日の風が吹く」よりも、私はこっちの方が好きだなあ。




とりあえず今回はここまで。

昔の日記からの抜粋なので、記述間違いや出典間違いがあるかも知れません。
その場合は、間違いを教えていただければ、これ幸いなのであります。




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