ちょっと「宇宙家族ロビンソン」の事について書きます。 最近(2004年7月)、「宇宙家族ロビンソン」の「LD-BOX VOL.2」を買ったんですね。 「VOL.1」も持っていなかったのですが。 「DVD-BOX」も発売されている昨今、何故今さら「LD-BOX」かというと、ウチの近所のCD屋が「閉店セール」をやっていて、その最終日に店内を覗いてみたら、その 「LD-BOX VOL.2」がなんと「90%オフ」で売られていたのですね。 定価が4万ちょいでしたので、4千ちょいで売られていたワケです。 そして、です。 「90%オフ」というまるで「投げ売り状態」にまで値が下げられつつも売れ残っていたその大きく重そうな黒い「LD-BOX」は、私を見上げ哀しそうな小さな声で、「SYUさん、SYUさん。SYUさんに買って頂きたくてワタシは今まで待っていたのです・・・」と神妙に語りかけてきたのです(うそ)。 そんなこんなで、5秒間ほど迷った挙げ句、購入した次第なのでありました。 「宇宙家族ロビンソン(1965〜68)」は私の大好きな昔のSFテレビドラマです。 製作は「60年代SFテレビドラマ・キング」の異名を持つ(かどうか知りませんが)「アーウィン・アレン」。 モノクロで第1シーズン(全29話)、カラーで第2シーズン(全30話)と第3シーズン(全24話)が作られましたが、日本では第1シーズンと第2シーズンのみが1966〜68年に放映されました。 もちろん、私は子供の頃にやっていた本放送は観ていましたし、後々繰り返し再放送されていたヤツは観たりビデオに録ったりしていたのですが、こうしてソフトを買うのは今回初めてだったのです。 物語はこうです。 1997年(という設定)、人類は地球の人口問題を解決すべく宇宙への移住計画を発動させます。 候補地はアルファ・ケンタウリ星系(太陽系に一番近い恒星で、4,3光年先にあります)にある「アルファ・セントリー星」で、最初の植民者として選ばれたのが「ジョン・ロビンソン博士」の家族でした。 しかし、密航していた「ドクター・スミス」の奸計により、宇宙船「ジュピター2号」は故障、彼らは宇宙の迷子となってしまうのでした。 登場人物はこうです。 1)「ジョン・ロビンソン」 「ステラー・ダイナミクス大学」の天体物理学教授である彼は、200万所帯の中から選ばれた栄えある最初の宇宙移民のリーダーで、またロビンソン一家の頼もしいお父さんでもあります。 演じた「ガイ・ウィリアムズ」は、日本でも大人気だったTVドラマ「怪傑ゾロ(1957〜59、日本放映は1961)」の人でした。 2)「モーリン・ロビンソン」 宇宙医学の生化学者であり、ロビンソン家の優しく聡明で奇麗なお母さん。 演じたのは「ジューン・ロックハート」。 彼女は「名犬ラッシー(1954〜64、日本放映は1957〜67)」の第二部の「お母さん役」としても有名でした。 ちなみに、この人、何となく日本の女優「加藤治子」に似ていると思うのは私だけでしょうか。 3)「ジュディ・ロビンソン」 ロビンソン家の19歳の長女。 女優志願の道を諦め、両親と共に宇宙移民計画に参加。 設定的には「オシャレで美人」という事になっているのですが、私的には「そうかなぁ」と思っていました。今ひとつキャラが立っていない様に感じていたのです。 が、日本版の声を演じた「武藤礼子」は昔から大好きで、それに救われていました。 ちなみに「武藤礼子」とは東京ムービー・虫プロ時代の「ムーミン(1969〜70・72)」の「ノンノン」の人でした。 4)「ペニー・ロビンソン」 ロビンソン家の11歳の次女。 知能指数は147で、趣味は動物学の天才少女。 彼女は当時日本では「ウィル」や「ドクター・スミス」「フライデー」を抜くほどの大人気でした。 それは「黒髪で三つ編み」というあどけなく可愛い容姿と、「聡明で清純」という設定が、多くの日本人の琴線に触れたのだと思います。日本人は昔からこの手の「可愛らしい天才少女」が大好きなのです。 吹き替えの「松島みのり」の愛らしい声も、その人気に大きく影響していたと思います。 5)「ウィル・ロビンソン」 ロビンソン家の9歳の長男。 歴史でトップの成績を収め、科学研究所を卒業した後に「ジュピター計画」に参加。 彼の「金髪でそばかす顔の少年像」は、当時の海外テレビドラマの定番でありました。 また、声を演じた「山本嘉子」がとても良い「アメリカの少年らしさ」を出していました。 6)「ドン・ウエスト少佐」 電波天文学校の大学院生であり、「アルファ・セントリー星」への人類移住の可能性を最初に説いた人物、とパイロット版では紹介されています。 また、ジュピター2号のパイロットでもあり、どうやら長女の「ジュディ」とは恋仲になっている様子です。 声を演じた「市川治」は「スーパージェッター(1965〜66)」の人でした。 7)「ザッカリー・スミス」 ご存じ「ドクター・スミス」。 あの姑息で陰険、策略家で小心者の彼は「宇宙家族ロビンソン」の「トリックスター」です。 「宇宙家族ロビンソン」はこの「トラブルメーカー」のドクター・スミスにより毎回、大事件・珍事件に巻き込まれてしまうのです。 また、声を演じた「熊倉一雄」の達者な名演技は、当時の少年少女の脳裏に刻み込まれており、日本人にとっては「宇宙家族ロビンソン=熊倉一雄」なのであります。 名セリフは「ドクター・スミス、ここにあり!」。 8)「フライデー」 正式名称は「環境制御ロボット・モデルB-9」。 原語では単に「ROBOT」と呼ばれていた彼が「フライデー」という愛称を得たのは、日本放映時の一般公募による「名前募集」によるモノでした。 もちろん、それは1719年にイギリスの作家ダニエル・デフォーが書いた「ロビンソン漂流記」からの発想で、無人島に漂着した「ロビンソン・クルーソー」が助けた原住民(後にロビンソンの召使いとなる)に付けた名前「フライデー」から来ています。 (何故、フライデーと名付けたかと言うと、金曜日に助けたからなんですね) これは実に真っ当で、誰もが納得出来る日本語版のネーミングでした。 反対に、本国オリジナル版で「フライデー」と呼んでいなかった事の方が不思議なほどなのであります。 ちなみに「宇宙家族ロビンソン」は、正確には「ロビンソン漂流記」にインスパイアされ1813年にヨハン・ダビッド・ウィースによって書かれた「スイスのロビンソン」という物語に、さらにインスパイアされて作られたSFテレビドラマでした。 その「スイスのロビンソン」は後に、「家族ロビンソン漂流記 ふしぎな島のフローネ(1981)」として日本でアニメ化もされていましたっけ。 さて。 私が購入した「LD-BOX VOL.2」には、モノクロ第1シーズンの後半「第16話〜第29話」が収録されていたのですが、改めて観てみると、これがいずれも傑作名作揃いでビックリしました。 「宇宙家族ロビンソンは第1シーズンの後半14話をその最高峰とする」と言っても決して過言ではありません。 と言うワケで。 今回、その中から、特に気に入ったエピソードをご紹介するのであります(以上、長い長い前振りでしたー)。 第16話「謎のコレクター その1 THE KEPER PART1」 第17話「謎のコレクター その2 THE KEPER PART2」 ロビンソン一家の前に現れた謎の男。 その男の持つ発光する杖の力で、ドクター・スミスは囚われの身となってしまう。 彼は全銀河を股に掛け、強大なパワーで様々な宇宙生物を収集する「宇宙ハンター」だったのだ。 海外SFテレビドラマでは、この手の「超越者」「絶対者」ネタが大好きです。 この「ハンター」、どこかで見た顔だなぁと思っていたのですが、ブックレットを読んで分かりました。 古典SF映画の傑作「地球が静止する日(1951)」に登場する「宇宙人クラートゥ」を演じた「マイケル・レニー」だったのです。 宇宙家族ロビンソンの中では珍しい前後編といい、ゲストにマイケル・レニーを持って来るところといい、第1シーズンの中盤作として、製作サイドがかなり力を入れたエピソードなのでしょう。 「ハンター」の声を演じたのは「小林清志」で、彼のボスの声が「納谷五朗」。 宇宙家族ロビンソン・シリーズで「格好良い悪者」が登場する際には、いつもこの二人が声を演じているのであります。 第19話「幽霊のいる星 GHOST IN SPACE」 ドクター・スミスの手抜き工事により、沼地から突然発生した沼気が「見えない怪物」を作り上げてしまう。 その夜、木をなぎ払い岩を砕き、地面に不気味な足跡を付け、ジュピター2号に迫り来る「見えない怪物」! いち早く危険を察知したフライデーが叫ぶ! 「警告!警告!対象の構成状態、計算されません!生物学的に解釈できません!」 こ、これは!! これは古典SF映画の大傑作「禁断の惑星(1956)」ではありませんかっ! 「アルティア4」に降り立った超光速宇宙船「C-57D」が、見えない「イドの怪物」に襲撃されるシーン。 異常を感知したロボットのロビーに隊員が「誰か来るのか?」と訊ねると、ちょっと迷った挙げ句、「いいえ。何も来ません・・・」と応えるあの名シーンに似ているのであります。 本作で地面に出来る足跡が「爪先三本」というのは、「禁断の惑星」の「爪先一本」の上を(冗談で)狙ったモノでありましょう。 これはもはや「オマージュ」というより立派な「パクり」。 でも、SF好きの私には大変面白いエピソードなのでありました。 このエピソードには、フライデーがギターを弾いてスコットランド民謡「故郷の空(♪夕空晴れて秋風吹く♪)」を唄う有名なシーンも入っています。 第20話「ロボット戦争 WAR OF THE ROBOTS」 ウィルとフライデーが偶然発見した壊れたロボット。 フライデーの忠告にも関わらずウィルはそれを修理してしまう。 そのロボットはロビンソン一家に取り入り、段々とフライデーの職分を犯していく。 ドクター・スミスに至っては「フライデーはもう役に立たないから分解してスポーツカーにしよう」と言い出す始末。 職を無くし失意のまま家出するフライデー。 が、しかし、その謎のロボットは地球人捕獲を企んだ宇宙人の手先「ロボトイド」なのであった。 本作は全ての「SFロボット好き」垂涎のエピソードなのであります。 なにせ、その「ロボトイド」は、あの「禁断の惑星のロビー」なのですから! この夢の二大ロボット対決は、「宇宙家族ロビンソン」が「20世紀フォックス」、「禁断の惑星」が「MGM」である事を考えれば、実に驚くべきエピソードです。 が、しかし、ブックレットを読んで納得しました。 「ロビー」も「フライデー」も同じデザイナー「ロバート・キノシタ」によるモノだったのです。 銀色でずんぐりむっくりした愛嬌のある「フライデー」。 メタリック・ブラックの精悍で格好良い「ロビー」。 二体のロボットが並ぶと、確かに黒くて強そうな分だけロビーの方が「悪者」に見えるのであります。 深夜、ロビンソン一家が寝静まった後、荒地で対峙した二体のロボットが、 「そろそろ話をつける時だ」 「聞こうか」 「俺がこの性能をフルに発揮できる今となっては、お前はもはやここには用のない存在だ」 「ロビンソン一家にとっては私は必用な存在だ」 「前はともかく、より優秀な俺がいる以上、もうお前のサービスは必要ない」 と淡々と議論する場面は、「SFロボット・フェチ」には、もう感涙モノなのであります。 ちなみに、「ロビー」の声を演じたのは、宇宙家族ロビンソンの準レギュラー悪役声優「小林清志」でした。 前19話で「禁断の惑星」のシチュエーションを「パクり」、本20話では「ロビー」自体を登場させる、これはSF心のあったスタッフが、楽しんで作ったエピソードだったのだと思います。 第22話「挑戦 THE CHALLENGE」 ウィルの前に現れた好戦的な少年「クワーノ」。 彼はとある惑星の「総統」の息子で、自分の勇気と力を示すためにウィルに決闘を申し込む。 この「クワーノ」、実に目つきの鋭い小憎たらしい顔をしている子役なのですが、これがなんと若い頃の「カート・ラッセル」でした。 ビックリです。 カート・ラッセルと言えば、「ニューヨーク1997(1981)」や「遊星からの物体X(1982)」「ゴーストハンターズ(1986)」「スターゲイト(1994)」「エスケープ・フロムLA(1996)」「ソルジャー(1998)」など、SF映画によく出ている俳優です。 「三つ子の魂百までも」ってヤツでしょうか。 また、「クワーノ」の声を演じたのが「小宮山清」で、「少年忍者 風のフジ丸(1964〜65)」で主役の人でした。 第24話「二人のスミス HIS MAJESTY SMITH」 宇宙人の策略により、「アンドロニカ星」の王となるドクター・スミス。 身代わりとしてスミスのコピーを密かに作り、ロビンソン一家に与える事にする。 が、そのコピー・スミスが実に誠実で気の良い男で・・・。 このネタも海外SFテレビドラマでは、昔からよくあるパターンです。 つまり、一人の人間が「良い人間」と「悪い人間」の二人に別れてしまう、という話です。 ドクター・スミスの場合は、元々小狡くて小心者の「悪い人間」ですから、単に「正反対のコピーを作った」という事でしょうか。 そのコピー・スミスがロビンソン一家に「これからはザックと呼んで下さい」と微笑みながら言い、入れ違いに後からやって来た本物スミスにロビンソン一家がさっそく「ねぇ、ザック」と呼ぶと、「私の事をザックなんて呼ぶなあぁぁぁっ!」と半泣きでキレるところなんざ、もう爆笑モノなのでした。 第26話「宇宙の財宝 ALL THAT GLITTERS」 第27話「宇宙の地下王国 LOST CIVILIZATION」 新しい水源地を求めて宇宙探検車「チャリオット」で出掛ける「ジョン」「ウエスト少佐」「ウィル」そして「フライデー」の男組。 ジュピター2号に残ったのは、「モーリン」「ジュディ」「ペニー」そして「ドクダー・スミス」の女組(スミスだけ男ですが例によって役に立たないから残されたのです)。 女組のところには宇宙警察に追われる宇宙盗賊「オーハン」が現れ、またまたドクター・スミスによって大騒動が持ち上がる(第26話)。 一方、男組は探検車修理のために入った洞窟で、地下王国への入り口を発見する。地下の奥深いジャングルの中で眠っていた幼い少女はその地下王国の王女であった(第27話)。 この第26話と第27話は別に「前後編」というワケではないのですが、ツインになっている面白いエピソードです。 一方が我が家(ジュピター2号)に残った女性陣(+スミス)の物語で、もう一方が探検に出た男性陣の物語になっているのです。 第27話に登場する地下王国の王女は「キム・カラス」という子役で、これは前述した「地球の静止する日」の監督「ロバート・ワイズ」のミュージカル大作「サウンド・オブ・ミュージック(1965)」の中で、「トラップ大佐の7人の子供」の5女「グレーテル」を演じた役者でした。 そしてまた、その映画の中でグレーテルのお姉さん、3女の「ブリギッタ」を演じたのが、なんと本作の「ペニー」役の「アンジェラ・カートライト」なのであります。 いやあ、面白い。 どうやら、「宇宙家族ロビンソン」と「ロバート・ワイズ」は、不思議な縁があるのかも知れません。 「宇宙家族ロビンソン」は、1998年に「ロスト・イン・スペース」としてリメイク映画が作られました(監督・スティーブン・ホプキンス)。 私的には「ゴスロリの次女ペニー」や「ゲイリー・オールドマンのドクター・スミス」等、面白くなりそうな要素はあったものの、結果的には満足のいかないSF映画でありました。 また、本年(2004年)の10月からはジョン・ウー製作で新テレビ・シリーズも予定されているのだとか。 これもあまり期待せずに待つ事にいたしましょう。 私が今回のエッセイを書きつつ思ったのは、「宇宙家族ロビンソン」の「ドクター・スミス」に、「困ったおじさんの系譜」を感じた事であります。 大人たちからは怠け者で役に立たない人間だと疎まれつつも、子供たちからは「何でも変な事を良く知っている愉快なおじさん」と愛されている人間です。 大人たちからはいつも問題ばかり起こす困った人間だと呆られつつも、子供たちには「平凡な日常生活に面白い風を吹かせてくれる」と密かに期待されている人間です。 もちろん、ドクター・スミスはロビンソン一家の「おじさん」ではありませんが、私はそこに昔のテレビドラマにあった、そして私が子供の頃にもよくいた、「困ったおじさんの系譜」を思い浮かべたのです。 それは例えば「フーテンの寅さん」みたいな「家族の中の異端」の存在なのであります。 最後に蛇足ながら。 昔からフライデーが言うセリフは「危険!危険!」なのか「警告!警告!」なのかという論争(論争?)がありますが、これはどちらも正解みたいですね。 すなわち「DANGER!DANGER!」も「WARNING!WARNING!」も、どちらも劇中で使用されているのでありました。 蛇足2。 フライデーが弾き語りで歌う「♪夕暮れ晴れて 秋風吹き♪」は日本では「故郷の空」というタイトルの、スコットランド民謡であります。 椎名誠の「アド・ハード(1990)」では行方不明になった父親が歌っていた懐かしい歌であり、また、 大昔の東宝映画「燃ゆる大地(1940)」では(本映画は日本が太平洋戦争のまっただ中に作られた国策映画でした。もちろん白黒映画)、劇中戦死する「佐藤」の持ち歌でありました。 (20170407) |
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