SYU'S WORKSHOP
モリアーティの潜航艇製作記
(後編A)
(1/5)
宮崎駿の傑作TVアニメ「名探偵ホームズ」に登場する
「モリアーティの潜航艇」をフルスクラッチしています。
「魚の様に海中を自由に泳ぎ廻りたい」という人類の夢は、
「鳥の様に大空を飛びたい」という夢と共に
紀元前の昔からありました。
BC.360年頃の「アリストテレス」の著作には、
逆さまにして空気を溜めた釜の中に人間を入れ
海中に降ろす様子が描かれています。
いわゆるこれが「潜水鐘」のオリジンであります。
そして20年後、
その教え子「アレキサンダー大王」が、
ガラス製の「潜水鐘」を作らせています。
ここで注目すべきは「ガラス製の」という点です。
海中に潜るのは「深海の神秘をこの目で見てみたい」という
本来の目的を思い出したのです。
この潜水技術は18世紀から19世紀にかけて、
別の目的のため一気に発展、完成していきます。
戦争で使用する「兵器」としてであります。
アメリカで作られた「タートル号(1776)」は独立戦争で、
「ハンリー号(1863)」は南北戦争で、
それぞれ敵艦船を撃沈するために作られた潜水艦でした。
世界初の蒸気機関で動く「リサーガム2世(1879)」や、
内燃機関と電動機を持つ近代潜水艦の祖「ホランド号(1901)」も、
最初から各国の海軍に売る目的で建造されたモノでした。
それ以降、潜水艦に求められるのは、
「海底の不思議を探りたい」という夢想家たちのロマンティシズムより、
軍人たちが必要とする兵器としての実用性の方が重要になったのです。
深海を臨む舷窓は無くなり、
兵装のために居住空間は侵蝕されていくのです。
かくして物事というものは、
何かを得る事で確実に何かを失っていく
モノなのであります。
なんて事を言いつつ、
「魚雷発射管後部扉」にディテールを付け加え、
さらに「ヒンジ部分」を整形していきました。
この「後部扉」は可動しますので、裏側のディテールも作りました。
魚雷の発射には通常「圧縮空気」を用います。
それで魚雷を「押し出す」のです。
と言うワケで「圧縮ボンベ」を二基取り付けてみました。
ちょっと立たせてみると。
あっ。可愛い。
「ご主人様に一生付いて行くんだモン」
って感じ、です。
狙った訳ではないのですが、得てしてフルスクラッチの途中には、
まるで隠し絵の様にいろいろな「別の顔」が見えてくる時があります。
そおいう場合、そのスクラッチは
「かなり気分良く」進んでいる証拠なのであります。
潜水艦の潜水や浮上は船内にある「バラスト・タンク」によって行います。
そこに海水を入れたり空気を入れたりして
全体の浮力を制御するのです。
通常そこも「圧縮空気ボンベ」で行うのですが、
本潜航艇には予備の(と言っても実はそれがメイン)
「海水排出用手押しポンプ」が備わっています。
モリアーティの手下「トッドとスマイリー」は
浮上する度、それの作業に大変です。
なんて「妄想」しながら「手押しポンプ」を作っていきます。
前にも書きましたが、
「妄想するのもいい加減にしろ!」と自分に言いたいです。
「プラパイプ」をカットし、
「プラ板」を円形に切り抜き、
パーツを揃えて、
組み立てていきました。
写真で「G」と書かれているパーツは、
「他のパーツもこれにも合わせて微調する際の基本形」
を示す覚え書きなのであります。
「G」は「grand(主な)」の「G」。
ポンプのシリンダー上部には
「WAVE」の「R・リベット(角)」を取り付けます。
この「ディテールアップ用パーツ」が素晴らしいのは、
そのまま使えば「ナット(♀)」となり、
先端を切り取れば「ボルト(♂)」として使える事であります。
ハンドル部分もプラパイプと真鍮線で作り、
「手動ポンプ」が完成しました。
今回のために作った「金属色カラーチャート」です。
「手動ポンプ」は全部で6基作りました。
下はその「基部」であります。
私はフルスクラッチ途中のパーツを、
それぞれ小さな「タッパー」に入れて整理しています。
「魚雷発射管」なら「魚雷発射管」のタッパーに、
「艦橋」なら「艦橋」のタッパーに、
「機関部」なら「機関部」のタッパーに、
という具合です。
ですが段々タッパー自体が増えてきて、
結局、何処に何が入っているのか判らなっちゃいます。
本末転倒なのであります。
つづきます。
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