大昔、中学・高校の時にハマっていた一つの深夜放送がありました。 以前エッセイにも書いた「ラジオ関東(現・アール・エフ・ラジオ日本)」でオンエアしていた「男達の夜・・・かな!?」であります。 私たちは略して「夜かな」と呼んでおりました。 パーソナリティーは「広川太一郎」。 その中に「ショートショートコーナー」という超短編を書いて送るコーナーがあり、そこに私は「零十三」というペンネームで、一時期せっせと投稿していたのです。 何回か番組でも採用され、「常連さん」と呼ばれていた時もありました。 ちょうど「星新一」にハマっており、フツフツと創作欲が湧き出ていた頃です。 と言うワケで、今回はその中で採用された作品「幽霊がやって来る」を再録させて頂くのであります。 |
幽霊がやって来る 東京都・零十三 その占い師は輝く水晶の球を見つめながら、「一週間後の今日、あなたの家に幽霊がやって来るのが見える」と重々しく言った。オレは昔から幽霊の類が苦手だったので、「どうしたらいいでしょう。幽霊が家の中まで入れないような方法は・・・」「大丈夫。このお札を家中に貼っておけば幽霊は一歩も入れない」オレは大金を出してそれを買った。 占い師の予言した日が近づくにつれて、オレの不安は大きくなっていった。仕事も手につかないので会社も休んだ。お札はすでに貼ってあるが、それでも落ち着かない。 そしてその日がやって来た。その時、オレの頭に名案が浮かんだ。「なんてことはない。オレが家にいなければいいんじゃないか」 オレは外に出た。ひどく体力が弱っていたオレは、急に飛び出してきたトラックをよけることはできなかった。 幽霊はやって来た。帰る家のない幽霊が。 (2月22日放送) |
何故こんな大昔に自分の書いたショートショートを覚えているかと言うと。 当時「セルフ出版」と言う所から「月刊 小説マガジン」という「B6版」の小雑誌が発売されており、そこにはラジオ「男達の夜・・・かな!?」の「ショートショートコーナー」で採用された作品を再録するページがあったのです。 そして、その私の「ショートショート」が載ってる号を持っているからなのでした。 |
この「月刊 小説マガジン」は「1977年6月号」で、「川谷拓三VSタモリ」の対談やら「長谷邦夫」の漫画「霊長類南へ(原作はもちろん筒井康隆)」などが載っているという、まこと摩訶不思議な雑誌なのでありました。 この本の「ショートショートコーナー」のページ冒頭には、次のような「アオリ文」が書かれています。 「若手精鋭のイキのいい作品と、思いきった新人のバッテキが、小説マガジンの大看板です。本誌では、ラジオでも新人の小説を募集しています。毎週火曜日深夜二時(厳密には水曜日の早朝午前二時)から、ラジオ関東(1420KHZ)『男達の夜・・・カナ!?』の中の”ショートショートコーナー”が、小説マガジンの提供番組です。毎週、原稿用紙(四百字詰)一枚の小説を募集し、三作から四作を読みあげています。毎回力作、傑作ぞろいで、毎月のベスト数作を本誌に掲載しています。 今回は、二月二十二日放送分から三月二十二日放送分までの中から五作を、再録いたしました。いずれ劣らぬ夢あふれる四百字の世界です。ぜひ、あなたも挑戦してみてください。 あて先は、なんたらかんたら」 え!? 「夜かな」の「ショートショートコーナー」は、「月刊 小説マガジン」の提供番組だったのか? そうだっけか? ちなみに、この雑誌。 「6巻」が出たところでさっそく廃刊が決まり、とても短命に終わったのであります。 合掌。 |
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