SYU'S WORKSHOP
ESSAY VOL.112
「続絶対架空書籍案内」
について

(2010年4月3日)


今回は以前書いた「絶対架空書籍案内」の続編なのであります。


「架空書籍」とは現実には存在しない出版社と著者が作った「架空の本」。
その「架空の本」にもっともらしい解説を加えた「嘘の書籍案内」。
それを眠れない夜とか布団の中で妄想するのが、私のささやかな趣味なのです。
ありそうで、でも何処を探しても絶対に無い本の概略や解説、惹句を考えるのがとても楽しいのです。

この「架空書籍」を捏造する人は、ネットで調べてみると結構多くいらっしゃる様で、実に頼もしい限りなのであります。
有名なところでは、「H・P・ラヴクラフト」の魔導書「ネクロノミコン」や、存在しない動物の生態を仔細に描いた「ハラルト・シュテュンプケ」の「鼻行類(1961)」、その集大成として幻想作家「ホルヘ・ルイス・ボルヘス」の「バベルの図書館(1941)」が上げられるのでしょう。



「雨留目遺跡発掘記」
百々世賢太郎著。
漆文化社。
「雨留目」(または雨富)は「あめどめ」と読む。
本書は明治末期岩手県髪滝村で発見された縄文時代の集落跡とされる「雨留目遺跡」の発掘記録である。
当初は縄文時代の貯水施設と思われていた雨留目であるが、長い研究の結果、「雨留目」は古来「天止メ」と書かれ、天界からの人間界への侵入を阻止する、一種の宗教施設だという事が判ってきた。
著者の百々世賢太郎は東日流大の名誉考古学教授。
詳細な写真48点と図説24点も併せて収録。

「筧三叉戯曲集 100人の幽霊(上下巻)」
筧三叉著。
夜の自習舎。
先月急逝した筧三叉の初めにして最後の戯曲集。
「2階の幽霊」「駅前幽霊」「幽霊がやって来る」「超幽霊生存証明」「100人の幽霊」を収録。
表題作の「100人の幽霊」は第38回巖國実戯曲賞を受賞している。
解説・岩架重太朗。

「ライムアッツの吸血鬼」

ハルベルト・シュタイン、ライモンド・レリッヒ共著。藤堂賢人訳。
きらら新書。
第二次世界大戦末期、北ドイツの寒村ライムアッツで10日間で48人の町娘が殺害される事件が起こった。
死体からは血液が抜き取られていたという。
戦後65年の今、その謎を膨大な資料と証言から解き明かしていく。
これはドキュメンタリーというより第一級のミステリー小説である。
第53回レイモンド・ダルヒ賞受賞。

「ぽんからぴりぺ」
喜多原るい編。
屯田堂。
東北地方に古くから伝わる民話・伝承を集めた作品集。
「美鬼と初孫」
「茄子の帰宅」
「裏ごし地蔵」
「外逃げ半兵衛」
「田楽庄屋」
「少し餅」
の6作を収録。
「ぽんからぴりぺ」とは黒津軽地方の方言で、「あれまあ、珍しい話を聞いた」という意味。
東日本小学校連盟推薦図書。

「改訂版 全国奇湯異湯68」
るるる編集部刊。
ロコス出版。
富士樹海の地下800メートルにある「黄泉富士温泉」や、飛騨の樹齢3000年の大神大杉の天辺にある「祖羅見温泉」など、一度は行ってみたい選りすぐりの奇湯異湯を写真付きで詳しく紹介している。
今回の改訂版では、新たに島根の「堕螺温泉」と山口の「喪油」、屋久島の「タメコロさん」が追加されている。

「月刊 ホムンクルスを造る! 創刊号」
パラケルスス・プレス。
これから毎月発売される本誌を全部購読すれば(全128号予定)、誰にでも簡単にホムンクルス(12センチサイズ)が造れる。
初回創刊号は「特大フラスコ(10L)」「携帯用ガラス撹拌棒(93.2センチ)」「黒赤イモリの粉末(0.02グラム)」が付いて、特別価格で290円!

「来巣ミイ写真集−レ・ビブリアント−」
来巣ミイ著。写真・綾呑一二三。
輝出版社。
ゾクドル来巣ミイの写真集第二弾が満を持して発売されました!
あんな所やこんな所、ミイちゃんに忍び込めない所はないのだ!
今回は北区天満の造幣局や■■にも忍び込んじゃいます!
用心しないと、貴方の心も盗まれちゃうかも、かも、かも?
かも〜〜っ!!?

「私はこうして一週間で65キロ痩せた」
林未明著。
プレンハウス。
超ド級話題騒然のダイエット本、ついに登場です!
あなたは無理な食事制限や、過激な運動で痩せようとしていませんか?
そんなの古い古い!
もうこれからは・・・?
その秘密はぜひ本書で確かめてみて下さい!
今なら特別に体重計が4個付いてきます!

「陰陽導温泉」
如月良著。写真・熊井達夫。
アクラ放送出版部。
富山と福井の県境に流れる死久竜川。その両側に広がる峡谷は訪れる人も少ない隠れた名勝地である。
その富山側の崖上から500メートル下った所、崖面にへばり付く様にその「陰陽導温泉」がある。
本書は2003年にアクラTVで放送した物を一冊にまとめたレポート+写真集である。
崖面から大きく突き出た岩棚にある露天風呂はここの温泉の一番の特色で、泉質は明色白色泉。
透明と白濁した両温泉が濃度の関係か、同じ湯船の中で決して混じり合う事がなくいつまでも静かに渦巻いているのは驚きである。
宿の夕飯に出される「茹ザムザ」も珍味である。

「メイキング・オブ・マグネットシティ」
アニドロイ編集部。
河守書店。
2008年の夏、劇場公開され全世界を熱狂の渦に巻き込んだ劇場アニメ「マグネットシティ」のメイキングと設定集。
5年半に及ぶ制作日記や美術・キャラ・メカ・フード設定はもちろん、1389678枚に及ぶ全動画も残さず全収録。
「つのの・けい」による「コミック版 マグネットシティ」(1264ページ)も特別描き下ろし。

「そろり噺 1」
稲妻亭曽呂狸(そろり)著。
迎橋出版。
大正末期の稀代の噺家、稲妻亭曽呂狸の「渦巻和尚」「おせんの踵」「地獄騒動(じごくさわぎ)」の三話が再録されています。
この「そろり噺」はシリーズ化が予定されていて、次回は「魑魅魑魅(ちみちみ)」「妄想お殿」「戦国長屋」が予定されています。
巻末の解説エッセイは、大輪寺三治の「江戸居留守」。


「原色弁当仕切り大図鑑」
駕籠泰己著。
燐光文藝社。
日本全国の駅弁、仕出し弁当、コンビニ弁当、食堂の幕の内等、1万8千903個を収集、分類、そのうち代表的な130個の弁当を写真(原寸大)で紹介している。
作者の興味は中身にはなく、その弁当の仕切り方法にある。
それは大きく「オールキャスト型」「玉座型」「ロミオとジュリエット」「フィボナッチ数列型」「親分子分」「忠臣蔵(大名行列)」「株式総会」「親子面談」の8パターンに別れるという。
巻末に仕切りで分かる逆引き駅弁索引が付いている。



以上、12冊の「架空書籍案内」でした。

一応全部、現実には存在していない「書籍名」「著者・訳者・写真家」「出版社」「文学賞」にしたつもりなのですが、万一、同一もしくは類似の名称があった場合でも、実在の物とは一切関係はないのであります。
一部「北ドイツ」「岩手県」「富山県」等の実在する「固有名詞」も出て来ますが、それに続く「ライムアッツ」「髪滝村」「死久竜川」等はみな実在しない嘘の地名です。

どれか読んでみたい本がありましたか?

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