SYU'S WORKSHOP
ESSAY VOL.131
「西へ行く者たち」について

(2011年9月3日)


「個人的に西部劇が好きで『シティボーイズ』でそれに近い感じが出せたらっていうのと、なんとなく時代の風は西に向いているって感じがあって」
「だいたい南に行くっていうと遊びに行くみたいだし、北に行くっていうと実験に行くみたいだし、東に行くとインテリがいそうだもんな」

これは前にも「今日の名台詞 その(6)」で紹介したセリフです。
上が「三木聡」、下が「きたろう」。
「三木聡」は私の好きな演出家で、「きたろう」は私の好きなコントユニット「シティボーイズ」の役者です。
三木聡とシティボーイズの舞台「愚者の代弁者、西へ(1993)」の雑誌のインタビュー「なぜこのタイトルを付けたのか?」に答えたセリフです。

私は今までここまで明確に、「東へ行く者」「西へ行く者」「南に行く者」「北へ行く者」の意味・意図を聞いた事がないのであります。
上の段で言えば、「西へ行く者」は「未知なるモノの探求者」となるのでしょう。



東洋で「西へ行く者」と言えば「西遊記」の物語を真っ先に思い浮かびます。
中国から仏教の経典を得るため、遙か西の地インドを目差した三蔵法師の話です。
「7世紀」の史実を元に、妖怪、仙人、魑魅魍魎が入り乱れる伝奇小説として「16世紀」に編纂され物語として書かれました。

日本人は昔から「西遊記」が大好きで、講談、小説、映画、漫画、アニメ等々、それぞれの時代の主流娯楽メディアにより、何回も何回も繰り返し作られて来ました。

私の好きな「西遊記」も幾つかあります。
漫画家「杉浦茂」の「少年孫悟空(1956〜57)」。
「虫プロ」初期のファンキーなアニメ「悟空の大冒険(1967)」。
「堺正章」の日本テレビのドラマ「西遊記(1978〜79)」。
「諸星大二郎」の漫画「西遊妖猿伝(1983〜)」。

イギリスのロックバンド「カルチャー・クラブ」のボーカル「ボーイ・ジョージ」が、三蔵法師を演じた「タカラ・缶チューハイ(1986)」の昔のTVCMも好きでした。
スケール感のある広大な中国ロケと、特殊メイクで作った孫悟空、猪八戒、沙悟浄、そしてボーイ・ジョージの妖しい三蔵法師。
バブル期のTVCMには「何故これをそのまま映画にせんのか?」と思う優れた映像の作品が幾つもあったのです。

「妖しい美女の三蔵法師」と言えば、ファミコン(ディスク・システム)の「ふぁみこんむかし話 遊遊記(1989)」のCMも好きでした。
ここでは黒眼鏡を掛け白塗りの外人女性モデルが三蔵を演じていました。
とてもポップな三蔵法師です。
「♪ブタさんは 本気でも 浮気なカッパッパ〜。
悟空が見てたら 三蔵ひっくり返ってすってんころりん
お釈迦様には ナイショだよ♪」
と唄うCMソングも大好きで、カラオケにあれば今でも歌いたいほどなのです(今日日あるのかな?)。

何故か日本では、西遊記を映像化する際、三蔵法師を女優が演じる事が多いのです。
昔の日テレのドラマで「夏目雅子」が三蔵法師を演じ、それがとても強い印象を残した事に原因があるのかも知れません。
後のTVドラマでも、「宮沢りえ」「牧瀬里穂」「深津絵里」と皆、女優が演じているのです。
これは野性的で乱暴者の「悟空」と対比させるため、理性的で達観した「三蔵法師」には女優が適していたのでしょう。
もちろん、「4人のチーム」の一人に「女性」を配役しておきたいと言う、作劇的な理由もあるのでしょう。
しかし、大元には大昔の虫プロアニメ「悟空の大冒険」で「野沢那智」が「オカマの三蔵法師」を演じた事に、私は遠因があると思っているのでした。
あれは画期的でしたっけ。

あ、違う。
今回は「西遊記」の話をしたかったんじゃないのです。
「東へ行く者」「西へ行く者」「南に行く者」「北へ行く者」について書きたかったのです。



西洋では「東へ行く者」「西へ行く者」は「開拓者」を指していました。
13世紀にイタリア・ベニスの「マルコ・ポーロ」は東への旅行記「東方見分録」を残しました。
それは東洋の「西へ行く者」と繋がり、結果その道は一本となり「シルクロード」と呼ばれる様になります。
15世紀にイタリア・ジェノバの「クリストファー・コロンブス」は帆船で西へ旅立ち、新大陸アメリカを発見しました。
19世紀になり、そのアメリカ東部に上陸した移民たちの子孫は、さらに奥へ奥へ「もっと西へ行く者」となったのです。
「西部開拓時代」の始まりであります。

「西部開拓」で思い浮かぶのは、70年代のヒット曲「ヴィレッジ・ピープル」の「GO WEST(1979)」です。
これは唄っているのが「男性6人組」と言う事もあってか、当初「ゲイの唄」とされてきましたが、本来はタイトルそのまま「西部を目指せ!」と言う「フロンティア賛歌」の歌なのでした。

20世紀に入ると、「北へ行く者」「南に行く者」には「冒険者」の意味を持ちました。
アメリカ人「ロバート・ピアリー」は最初に北極点(これには異論があり)に、ノルウェー人「ロアール・アムンセン」は南極点に到達したのです。

あ、違う違う違う。
そんな人類開拓史の話をしたいんじゃないのです。
今回は私の好きな小説や映画の「東へ行く者」「西へ行く者」「南に行く者」「北へ行く者」について書きたいのです!



と少々前書きが長くなりましたが(今まで前書きか〜いっ!)、やっと本文を書かせて頂きます。

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「独立愚連隊西へ(1960)」
これは「岡本喜八」の戦争映画です。
前年「独立愚連隊(1959)」の続編で、戦争映画とは言え監督があの「鬼才」岡本喜八ですから、傑作娯楽大活劇となっています。

舞台は日中戦争(1937〜45)の北支(中国北部)戦線。
全滅した「歩兵463連隊」の軍旗捜索のため、独立「左文字(さもんじ)小隊」が現地に派遣されて来ます。
彼ら「左文字小隊」は皆一度「戦死公報」に載った者たちで、「公式的」には、すでに死亡しているのです。
つまり、「左文字小隊」は全員戦死者で作られた「特別部隊」なのです。

曲者揃いの彼らはどの部隊にも所属せず、戦地をあちこちと使い回されている「存在しない部隊」でした。
タイトルの「西へ」は方位と言うより、各地で暗躍する「左文字小隊秘話」的な意味なのでしょう。
それはご機嫌なテーマ曲「独立愚連隊マーチ」でも唄われています。
「♪イーリャンサンスー イーリャンサンスー
今度はどこだー、西か東か南か北か
どこへ行ってもハナツマミ♪」

沈着冷静で切れ者の青年将校、左文字少尉が「加山雄三」。
その片腕で歴戦の勇士、戸川軍曹が「佐藤允」。
映画の最初と最後でおいしい芝居で全てを攫う、中国軍隊長が「フランキー堺」。
突発事故により銃身を斬り落とされ、いつも「斜め45度」にしか発砲出来ないいライフル銃が、後半重要なアイテムとなったり、誰が味方で誰が敵か最後まで判らない気を許せない展開や、「左文字隊」VS「数百人の八路軍」の生死を掛けた大籠城戦、それに続く敵スパイと従軍看護婦を加えた奇妙な一行の「敵中突破劇」等々・・・、脚本と編集の冴えと素晴らしさは岡本喜八の、いや日本映画の「ベスト10」に入る大傑作だと私は思っています。

蛇足ですが、本作には漫画「風の谷のナウシカ」を思わせる場面が登場します。
宮崎駿が本作を観たとは思えないので(多分)、これは「優れた創作者」ゆえの偶然なのでしょう。

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「地底超特急西へ(1966)」
テレビがまだ白黒だった頃のSFドラマ「ウルトラQ 第10話」のエピソードです。
放送的には「第10話」ですが、制作は「28回目」と本シリーズ最後に作られています。
「完璧な特殊撮影」「練られた脚本」「上手い演出」等々、私の中でも「ウルトラQ」の上位に位置する大好きなエピソードなのでした。

「時速450キロ」で東京〜北九州を3時間で駆け抜ける超特急「いなずま号」。
その走行区間は5分の4までが「地底走行」のため、事故に対しては万全の対策が取られていました。
いや、事故などは起こるハズがなかったのです。
しかし、その公開試運転の日、誰もが予想しなかった最悪の「大事故」が起るのでした・・・。

ウルトラQは「30分番組」でしたが、「30分」とは思えないほど密度の濃い物語でした。
「ウルトラQ」には「怪獣」が出てこないエピソードが幾つかあるのですが、そのいずれも「傑作SF」になっています。
中でも本作は「SF」で始まり、最後は「ファンタジー」に終わると言う、私の好きな短編SFの傑作なのです。
もっとも怪獣が出てこないと言っても、「人工生命M1号」という怪物は出て来ますけども。

本作の「西へ」は文字通り「東京発博多行き」を意味しています。
東京から大阪や九州に行く新幹線の映像が、富士山を背景にしたいと言う理由があるにせよ、いつも「右から左」に走っているのも実に示唆的であります。
また、「西へ」には未来に挑む「チャレンジ精神」、それに伴う「危険性」も暗示しているのかも知れません。

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「ウルトラ警備隊西へ(1968)」
「ウルトラマン(1966〜67)」に続くSFドラマで、「ウルトラセブン 第14話(前編)と第15話(後編)」にあたるエピソードでした。

まだ夜も明け切らぬ早朝。
神戸港を突然真っ赤に染めるタンカーの大爆発が起こる。
前後して、神戸では「地球防衛軍科学者」たちの連続殺人が起こっていた。
ついに「ウルトラ警備隊」に特命が下る。
殺された科学者たちは皆、先日世間に隠し発見された「暗黒星ペダン」に関して、「六甲山防衛センター」で協議するため来日していたのだ。
一体、神戸の地で何が起こっているのか・・・。

テレビSFでは「ジャイアントロボ(1967〜68)」が「巨大ロボット」をすでに実写映像化していたにせよ、本作の「キングジョー」は衝撃的でした。
非凡な「成田亨」のデザインと的確な「高山良策」の造形はもちろんの事、本作は実写初の「合体するロボット」なのです。
ちなみに、アニメで合体するロボットは東映動画の「ゲッターロボ(1974)」、漫画は手塚治虫「鉄腕アトム」の「ガデムの巻(1959)」が最初でした。

タイトル「西へ」は、関東・富士山麓に本部がある「ウルトラ警備隊」が「関西の事件に関わる」と言う意味でした。
「ウルトラマン」でもそうでしたが、ウルトラ・シリーズで時折「関西が舞台」になったのは、番組提供が「武田薬品(大阪が本社)」だからなのでした。

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「北へ還れ!(1968)」
これは「ウルトラセブン 第24話」のエピソードです。

「フルハシ隊員は母が病気との連絡を受け、彼の故郷・北海道に来た」と「浦野光」の名ナレーションで始まる本ドラマは、ウルトラ警備隊「フルハシ(石井伊吉・毒蝮三太夫)」が主役となるエピソードでした。
北海道や北極圏が舞台になる本作で、私はこの手の「チームの一人が主役」となるエピソードが昔から大好きなのであります。
単発ドラマでは出来ない「シリーズ物」の醍醐味だと思います。

「母が病気」は結局、嘘で、大昔からテレビドラマでよく見掛ける「田舎から東京に就職した者を呼び戻す方便」なのですが、果たしてこれは現在でも有効なのでしょうか。
何にせよ、本作は北極海から地球侵略を開始した「カナン星人」の話と供に、フルハシ隊員の「気高さ」を描いたエピソードでした。

「カナン星人」は大きな複眼を持った宇宙人です。
スター・ウォーズの賞金稼ぎドロイド「4-LOW」にとても似ています。
でも、ルーカスが観たとも思えないので(以下略)。

しかし、こうして見ると「円谷プロ」のタイトルは「西」やら「北」が多いのが分かります。
この理由は・・・いつか考察したいと思います。

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「霊長類南へ(1969)」
「筒井康隆」の私の大好きな初期の傑作SF長編であります。

60年代、アメリカとソ連の「冷戦」時代。
突如、世界規模で「核戦争」が起こり、それに巻き込まれる人々を、筒井得意のスラップスティックで日本人を中心に、オムニバスで描いて行くSF小説でした。

筒井が真似たのは本作10年前に発表された「ネビル・シュート」の傑作SF小説「渚にて(1957)」でありましょう。
北半球で勃発した核戦争の放射能から逃れるため、人類が皆「北半球から南半球へ」大移動して行くお話でした。
人類が最後に辿り着いたのはオーストラリアのメルボルン。
そこでの美しくも哀しい数日間の人類最後の物語です。
これを1957年に「スタンリー・クレイマー」が映画化しており、この映画も私の大好きな「SF映画ベスト10」に入るのでした。

「霊長類南へ」も誰か映画化しないかなあ、と昔から私は思っていました。
映画にするなら「岡本喜八」が良いなあ、とも思っていたのです。
実際に「岡本喜八」が「筒井康隆」を映画化したのは、それから20年後の「ジャズ大名(1986)」でした。
「ジャズ大名」より、まず「霊長類南へ」だろが!

「長谷邦夫」が一時期「小説マガジン(1977)」という雑誌で漫画化していたけども、結局あれは「未完」に終わったのかなあ?

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「特車隊、北へ(1989)」
初期OVAアニメ「機動警察パトレイバー」の「第7話」のエピソードであります。
OVAとして始まったパトレイバーの、劇場版「機動警察パトレイバー the Movie(1989)」を記念したプロモーションのため、急遽制作された特別編でありました。

テロリストに盗まれたトレイラーに搭載されていた「極秘軍用レイバー」を、さらに別の者によって盗まれてしまうと言うお話です。
それを追跡し「第二小隊」は関越自動車道を北上、関東から新潟へと向かうのでした。

野明「どうして関越自動車道を北上中と推定できんですか?」
トレーラーは関越道に入ってすぐ盗まれたのです。
後藤隊長「まだ、降りた様子がない」
野明「は?」
香貫花「出入り口さえ押さえてしまえば、高速道路というのは疑似密室になる事ぐらい、判らない?」

高速道路が「密室」となるのは、ミステリーではすでにある設定でしたが、それをアニメでやった事に私は感心したのでした。
さすが私の大好きな脚本家「伊藤和典」なのであります。

本タイトル「特車隊、北へ」は、ウルトラセブン「ウルトラ警備隊西へ」から来ています。
「機動警察パトレイバー」はこの手の、「東宝SF映画」「ウルトラ・シリーズ」「海外特撮SFテレビ」等々のオマージュがたくさん出て来るのです。
私みたいな昔のSFマニアとしては観てて、とても面白いのでした。
あ、私の好きなパソコンゲーム「ウィザードリィ」パロディもあったなあ。
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タイトルに「東へ」「西へ」「南へ」「北へ」が付くわけでは無いけども「方位が重要」な、私が好きな映画を二つだけ挙げておきます。

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「北北西に進路を取れ(1959)」
ご存知「アルフレッド・ヒッチコック」の傑作サスペンス映画です。
主演は「ケーリー・グラント」。
物語は「ニューヨーク」から始まり、昔の大統領の巨大彫刻があるサウスダコタ州の「ラシュモア山」で終わります。
ヒッチコック得意の「間違えられた男」の話です。

本作は主人公がトウモロコシ畑で複葉機に追いかけ回されるシーンが超有名です。
この場面は何度観ても、「いやあ、本当に上手いなあ」とシミジミ感心してしまいます。
カットのモンタージュが、カメラアングルが、演出が本当に見事なのです。

タイトル「北北西へ」に関しては、昔から幾つかの解釈がされて来ました。
つまり、「ニューヨークからラシュモア山」は「北北西」には位置していないのです。
正しくは「西」なのです。
じゃ何故「北北西に進路を取れ」なのか?

ひとつ目の解釈は原題「North by Northwest」から、「ノースウエスト航空で北へ」の意味なのだ、と言う説です。
確かに劇中、主人公は「ノースウエスト航空」で移動しているのです。

ふたつ目の解釈は、シェークスピアのハムレットの名台詞「狂気は北北西の風の時に限られるのだ」から来ていると言う説。
「北北西へ進路を取れ」の主人公は「謎に翻弄され混乱している」、と言うのです。
正解は判りませんが・・・。
ま、私は単に「ヒッチコックが間違えたのだ」と思ってますけども。

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「メリー・ポピンズ(1964)」
原作は「パメラ・トラバース」の児童文学です。
タイトルは「風にのってきたメアリー・ポピンズ(1934)」。
これをディズニーが映画化した本作を、私は昔から大々大好きなのであります。

20世紀初頭のロンドン。
「桜通り17番地」にある銀行家のバンクス家の所へ、ひとりの不思議な「子守り」が空から舞い降りて来ます。
それは春、いつもとは違う「東風」が吹き荒れた日の事でした。

彼女は「メリー・ポピンズ」と名乗り、バンクス家にある問題を簡単に解決してしまいます。
バンクス家は銀行に勤める厳格な父と、女性独立運動に励む母と、その二人の幼い姉弟の4人家族です。

そして最後の場面。
風向きが再び「西風」に変わった時。
バンクス一家が公園で無邪気に凧上げしているのを、メリー・ポピンズは少し寂しそうに、でも決然と颯爽に、誰にも別れを告げず再び空へと舞い戻って行くのでした。

風と共にやって来て、風と共に去って行く。
これは「宮沢賢治」の「風の又三郎(1931〜33)」でも同じ展開でした。
「風が変わると特別な事が起こりそうな気がする」のは、洋の東西を問わず、一緒なのかも知れません。
メリー・ポピンズでは「東風」で物語が始まり、「西風」で終わるのであります。
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最後に、浅学な私がまだ観ていない「東へ」「西へ」「南へ」「北へ」が付く作品を数点挙げておきます。
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「東への道(1920)」
映画史に残る「イントレランス(1916)」を作った「D・W・グリフィス」のサイレント映画です。
悲劇のメロドラマで、原題は「東へ堕ちる(WAY DOWN EAST)」。
つまり、この「東」は「退廃・堕落」を意味しているらしいのでした。
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「幽霊西へ行く(1935)」
監督は「ルネ・クレール」。
18世紀のスコットランドの幽霊が愛しい人を求め20世紀のアメリカへ渡るコメディ映画です。
この「西へ」は前述した通り、「ヨーロッパからアメリカへ」を意味しています。
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「グーフィーの幌馬車隊西へ(1945)」
ディズニーの短編アニメです。
面白いのは開拓者もインディアンも皆「グーフィー」なのです。
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「幌馬車隊西へ!(1957)」
これもディズニーですが、実写映画でした。
昔のディズニーは「西部劇が好きだった」事が判ります。
これは穿って見ると、「未開地を切り開く(その裏には原住民を駆逐する)アメリカ人」の特性を現している様に私は思えます。
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「隠密飛竜剣 隠密十兵衛、西へ(1959)」
「高木彬光」の伝奇時代小説です。
将軍家光から「西国探索」の特命を受けた柳生十兵衛の短編集です。
武者修行で「江戸から西へと旅をする」と言うと、アニメ「サムライチャンプルー(2004〜11)」を思い出します。
ま、洋の東西を問わず「ロードムービー」は皆「西」を目差す、のかも知れません。
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「アメリカ物語2 ファイベル西へ行く(1991)」
アニメ映画、前作「アメリカ物語(1986)」の続編です。
恐ろしい猫がいないと期待しニューヨークにロシアから渡って来たネズミの一家の物語。
結局、そこでも彼らはアメリカ猫に襲われる事になります。
一家はさらなる自由を求めて「西」へ向かうのです。
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「恋する彼女、西へ(2008)」
監督は「酒井信行」、主演は「鶴田真由」。
ちょっと調べてみると昔の「NHK少年SFドラマシリーズ」っぽい話らしく一度観たいんですが、何処にも無いんですよね・・・。
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「南へ(2011)」
これは「野田秀樹」の演劇・舞台です。
とある「火山観測所」にやって来た「虚言癖の女」。
火山観測所と聞くと「宮沢賢治」の「グスコーブドリの伝記(1932)」を思い浮かべますが、これはそのオマージュなのかも知れません。
違うかな?
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本エッセイ冒頭で書いた演劇「愚者の代弁者、西へ」は、その後「愚者の代弁者、うっかり東へ(1995)」という続編も作られています。
どうやら「愚者の代弁者」は、西や東に「右往左往」してるみたいなのです。
さすが「愚者の代弁者」であります。

そお言えば。
井上陽水にも「東へ西へ(1972)」って歌がありましたっけ。
「♪昼寝をすれば夜中に、眠れないのはどういう訳だ♪」って、よく考えると「身も蓋もない」歌詞のヤツです。
続けて出てくる「♪満員いつも満員、床に倒れた老婆が笑う♪」って所が、「つげ義春」の漫画みたく気味悪くシュールで私は大好きなのでした。


ちなみに、私が向かうとすれば「北へ」であります。
暑いの嫌いで寒いのが好きだからです。
何より「北へ行く」方が、「ストイックで格好良い」じゃないですか。




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