SYU'S WORKSHOP
ESSAY VOL.152
「さらば愛しきアジトよ」
について

(2014年6月14日)


私は以前「発見!ラムダのアジト(1)」というエッセイを書きました。


それはTVアニメ「ルパン三世」の第2シリーズ(1977〜80)、「第155話 さらば愛しきルパンよ(1980)」に出てくる、「装甲ロボット兵ラムダ」の秘密基地である「アジト探訪記」でした。
(この回と「第145話 死の翼アルバトロス(1980)」だけが、宮崎駿が絵コンテ・演出をしており、30年以上経った今でも信じられないぐらい質の高いTVアニメの傑作なのです)

そのエッセイは、屋上に広告塔を持つアニメのモデルになった実在するビルの発見・報告でした。

が、しかし。
それが・・・気がつけば・・・無くなっていたのです。


電車から見る流れゆく景色の中で、「あれ?あの広告塔が無くなっている?」と思ったのは、もはや今年の初めだったか、去年の暮れの事だったか。
実地検分をサボっていたわけでもないのですが、先日、写真を撮り確認しましたので、ご報告する次第なのであります。


アニメでは「葉桜」、実際には「黄桜」という日本酒の銘柄が書かれた広告塔のあるビルです。
当時近くに「さらば愛しきルパンよ」を作った「テレコム」というアニメ制作プロダクションがあったのです。

しかし今(2013年か2014年か)、その屋上から大きな広告塔だけが、スッパリ無くなっていたのです・・・。



「黄桜」という酒造メーカーや、その名を冠する日本酒は今もありますから、単に広告塔だけが外されたみたいなのです。

こおいうのは維持費やら広告費がかかり、世知辛い世の中ですので、スポンサー側にそんなゆとりが無くなったのかも知れません。


以前のエッセイでも書いた通り、「装甲ロボット兵ラムダ好き」としては、未来永劫残り続けてもらいた「記念碑的建築物」だと思っていたのに・・・。
それがいつの間にか無くなっていたのでした。


「またひとつ、私の時代が終わった・・・」とは少しオーバーですが、感傷的になった事も事実です。


大昔、浅草には「凌雲閣」という十二階立ての有名な建築物がありました。
これは関東大震災(1923)で壊れてしまいます。
昭和になって、それを模して「仁丹塔」が建てられました。
それも1986年には解体されています。
私にはその記憶が妙に残っているのです。
実際に見た事なのか、それとも本で読んだ疑似記憶なのか(江戸川乱歩が昔から好きだったので)、今となっては判らないのですが、確実なのはもう「仁丹塔」は世の中には存在していない、という喪失感なのでした。


東京タワーは私が生まれた頃から、当初の目的は変わりましたが、今でも存在しています。
多分、私が生きている間に無くなる事はないでしょう。
しかし、昔あったいろいろな建造物が私の周囲から消え去って行くのも、これまた事実です。
私はそれを目撃する度に、大きな喪失感に囚われるのです。


あーあ。
葉桜ビル・・・ラムダのアジト・・・無くなっちゃったなあ・・・。

(ちなみに、以前書いたエッセイが「発見!ラムダのアジト(1)」だったのは、葉桜ビルから飛び立ったラムダが、敵の本拠地である永田重工本社ビルへの飛行ルートを(2)で書こうと思っていたからなのでした。
もう書かないけども。
多分)

(追加補足・ネットを彷徨っていたら、この屋上看板は2009年の12月にはすでに無くなっていたらしいのであった。20140625)




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