SYU'S WORKSHOP
ESSAY VOL.89
「追補、ホッペタに入る斜線」
について

(2007年12月26日)


私は以前、漫画やアニメの「ホッペタに入る斜線」についてエッセイを書いた事がありました。
漫画とアニメ、ホッペタに入る斜線

そこでは、「赤面」「上気している様子」「影」「立体感」「しもやけ」「あかぎれ」「ノイズ」「タッチ」「ヒゲ」「産毛」「汚れ」「貧乏としての記号」等々、いろいろと考察してみたのであります。

「たいていの漫画やアニメでの斜線は、そのいずれかに所属する」と私は思っていたのですが、つい最近(ま、最近でもないのですが)それらとはまったく異なる目的を持つ「ホッペタ斜線」を発見してしまったのです。

これです。



これです。



これも、



これも、



これも、



そして、これも。
(相変わらず似ていない私の模写ですいません)



みなさんご存知、「西岸良平」の描くキャラクターに入る「ホッペタ斜線」であります。

これが「赤面」や「上気」でないのは、物語の流れと関係なく全てのコマに「最初から最後まで」付けられている事で判りました。
かと言って、彼の描く漫画に彼自身が「影」や「立体感」、「ノイズ」や「タッチ」等を求めていない事も明かです。
さらに、老若男女、子供も大人も男も女も、全てのキャラクターに、この「斜線」が付けられていますので、「しもやけ」「あかぎれ」「皺」「艶やかな頬」「ヒゲ」「産毛」でもありません。

じゃ、西岸良平がいつも好んで描く「貧乏(もしくは庶民)の記号」なのかなとも思ったのですが、金持ちにもこの「斜線」がありますので、それとも違うらしいのです。


考えあぐねた挙げ句、ハタと気が付きました。

この西岸良平が必ず漫画人物に付ける「ホッペタ斜線」とは、単に「間が持たないから」という理由なのであります。

これも、



これも、



これも、



これも、



これも、



これも



ね。
間が持たない」でしょ。


ここで見られる「ホッペタ斜線」とは、「絵」の「間が持たない」ためだけに存在する、淡泊で間延びしたキャラの顔の「隙間を埋めるためだけ」に存在する「ホッペタ斜線」であったのです。

やるなあ。
西岸良平。




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