私は昔から本や漫画、テレビや映画などに登場する「名台詞」を日記に書き留めておくようにしていました。 と言うワケで、今回も昔の日記からそれらを抜き出してご紹介するのであります。 (今回は2000・01年頃の日記からの抜粋です) コメントはその当時のモノ。 ※印付きのコメントは、今の私の補足説明です。 またまた前後の脈略無くズラズラズラと並べてみました。 「プラモマニアには女性がごく少ない。なぜなら『無償の情熱』というのは、女性の本性と根本的に相容れないからだ」 モデルグラフィックス「黒須吉人の空辞苑」より。 ※世の中にはとても素晴らしい模型を作られている女性モデラーの方もいらっしゃいますので、これは少々乱暴な言い方でありましょう。 とは言え、「意味ない事に情熱を注ぐ」というモデラーの特質は確かに男性の方が多いのかも知れません。 それは単に「男の方が馬鹿だから」なのかも知れません。 「パソコンを使っていると、いろいろなエラーが起きます。 『そんな信用できないものを売るな』と怒っても『誰の責任だ!』と叫んでも、とにかくある確率でエラーは発生します。 そして問題は『パソコンでエラーが起きる確率は結構高い』という点です。 エラーが発生すると、多くの場合、それまで保存していないデータは消えます。信じがたいかもしれませんが、そうして消えたものは二度と元には戻りません。 それは、消えてしまったのです」 メディア・テック出版。 飯島弘文「エラーがわかるとWindows98/95に強くなる」より。 最後の駄目押し「それは、消えてしまったのです」という文句が冷徹で妙に格好良い。 ※パソコンが社会に普及し始めた時代、「これからはペーパーレスだ」と言われたモノですが、意に反して紙の需要は高まった様に思います。 皆せっかく作った文章やデータを、不意の事故で消してしまう事を心配し、好きな時に参照できる「紙」にプリントアウトして残す事になったからです。 なんのこっちゃ。 「私たちの問題は資金の事ではない。『空を飛べる』と信じてる事です」 ライト兄弟。 ※なかなか格好良いセリフです。 しかし、ライト兄弟の場合は歴史に名を残す事が出来ましたが、何かを信じ酬われないまま歴史から消えていった人も多いのであります。いや、絶対そっちの方が多いでしょう。 多分。 「自爆装置付きの携帯電話」 というのを帰宅途中にフト思いついた。 ちょっと欲しいかな、これ。 ※昔からのSF者にとって、「自爆装置」というのは全てのメカには必ず搭載して欲しい憧れの機能であります。 冗談です。 「安物おもちゃほど長持ちする」 「噂の真相」より。 「壊れてもすぐ捨てちゃえばいいや、と無茶苦茶に扱っても、単純な作りだけに結構丈夫だったりして、気がつくといつまでもおもちゃ箱に入っていたりするものだ。 『モーニング娘。』を見ていてフトそんな事を考えた」と続く。 ※「噂の真相」に誰が書いた文章かは失念してしまいました。 「かのアメリカSFの父の一人、ロバート・A・ハインラインは、SFを『可能だが実在しない』事柄を描くジャンルだとした。 一方のファンタジーとは『不可能で実在しない』世界の物語、と言うわけである」 出典不明。 ※いずれにしても「実在しない」世界で、私はこの世界が二つとも大好きなのであります。 「ローマ数字のXは、Vが二つで、10という意味」 と模型雑誌に書かれていた。本当かなあ。 ※本当かなあ。 「おじいさん シマリスはちがうと思うのでぃす」 「うん?ちがうって なにが?」 「年寄りがきらわれるのは いっしょに遊べないからだと思います」 「ほー」 いがらしみきお「ぼのぼの」。 「年寄りが若いヤツらに嫌われる理由」より。 ※「ぼのぼの」は名台詞の宝庫です。というか名台詞ばかりで構成されている4コマ(8コマ)漫画と言えるでしょう。 このシマリスくんとおじいさんの会話はさらに続きます。 「でも わしだって 若い頃なら なんでもやれたよ。だから そういう遊びがどんなにおもしろいかも知ってるさ。そして どれくらいやるとアキてしまうのかもな。どんな遊びだって結局アキてしまうんじゃよ」 (中略) 「つまり どれくらいおもしろいのか、どれくらいやるとアキるのか。そういうことがわかっているヤツにそばにいられたら、誰だっていやじゃろうよ」 いがらしみきお「ぼのぼの」。 「年寄りが若い奴らに嫌われる理由」より。 ※エジプトのピラミッドの壁画には「最近の若いモンは」と書かれていたという、嘘だか本当だか分からない有名な話がありますが、それぐらい大昔から若者と老人の確執は存在していたという事でありましょう。 その理由が「一緒に遊べないから」「その遊びがいつ飽きてしまうか知っているから」と看破した事に、このエピソードの素晴らしさがあるのです。 「平凡こそが非凡である、ということの意味をチェスタトンはこう説明している。 『7歳の子供なら、トムが戸を開けたら竜が居た、と言う話を聞いて面白がる。 ところが3歳の幼児なら、トムは戸を開けた、と言う話だけで面白がる』」 出典不明。 ※G・K・チェスタトンは昔の有名なミステリー作家です。 上記「ぼのぼの」と同様に、人は歳を取ると共に「楽しい事」「面白い事」が減っていくのかも知れません。 「羊に引き連れられた狼の群よりも、狼に引き連れられた羊の群の方が強い」 よく言い古されたアフォリズム。 ※「アフォリズム」とは「格言」の意。 これは「集団には強いリーダーが必要だ」と言っているのですが、「羊に引き連れられた狼の群」の方が絵になるし、物語になりそうなのであります。 「作詞という作業は、まったくつらい。 特に大人になってからの作詞というのはきっつい。 10代の頃は、湧き出るようにドバドバと脳から言葉が出てきて、後で読み返してみればちゃんと韻を踏んでいたりダブルミーニングになっていたりしたもんだ。 アレこそが『若き苦悩』の成せる技だったのであろう。 大人になるといけません。 下手にテクニックを知っちゃっているものだから、メタファーや落ちもあざとくなっちゃって、『ワッハッハうまいねどうも、おい、大槻さんの座布団全部取っちゃいな』と円楽さんに全然笑ってない目で言われてしまいそうな、技巧に走る傾向が出てしまう。 身に付いた小手先のテクニックを聞き手に意識させないようにするための、さらなるテクニックが必要となってくる。 しかし技術の向上が感性の暴走に歯止めをかけ、詞自体のダイナミズムを制御してしまうのもまた事実。 うーん難しいものなのだ」 大槻ケンヂ。週刊アスキーの連載より。 ※これは別に作曲・作詞の世界だけではなく、全てのクリエイティブに言える事でありましょう。 感性と技術。パッションとテクニック。 そのどちらも共に伸びていくと良いのだろうけども、確かになかなか難しいモノですね。 「殺人の動機は大きく六つ。 愛憎、金銭、攻撃、防衛、思想、異常心理」 出典不明。 ※多分、江戸川乱歩の小説に書かれてあったのかな。 「暗黒星」 明智小五郎がどこかで言った単語らしい。 謎の正体はすぐ目前にあるのに、どうしても見えないモノ。 近くにありすぎて、その実体を見抜けないモノ、という意味らしい。 ※「明智小五郎」はご存知、江戸川乱歩が創作した日本の有名な名探偵です。 乱歩の書く推理小説にはこの「近くにありすぎて、その実体を見抜けないモノ」のパターンが多いのであります。 ま、得てして正体は「怪人二十面相」なのですが。 「人間は中途半端な死体として生まれてきて、一生かかって完全な死体になるのだ」 寺山修司。 ※いかにも寺山修司が言いそうな台詞です。 私たちは完全な死体になるために日々、生きているんですね。 「アーニア、僕はもう3時間もずっと考えてたんだが、きょう僕は死ぬよ」 ドストエフスキー。死の直前、妻に。 ※ドストエフスキー臨終間際のとてもドラマチックなセリフですが、ちょっと創作っぽい臭いもします。 「じゃこれを付けてください」と青島、御守りを差し出す。 「俺は御守りを付けたまま殉職したヤツを三人知っている・・・」と和久。 「踊る大捜査線」より。 ※「踊る大捜査線」は1997年のTVドラマで、それ以降も何回も再放送やスペシャル、番外編、映画化された人気シリーズでした。 上記のセリフはいかにも刑事ドラマにありそうな定番会話で、その「よくある」セリフが反対に、安心して観ていられるのでありました。 「あー、やきそば日和の、良い日だなあー」 「アンパンマン」から、やきそばパンマンのセリフ。 ※「やきそば日和」とは、サリンジャーの「ババナフィッシュ日和」に通ずる「シュール」で「奥が深い」セリフなのであります。 私も時々、無性に屋台のやきそばや日清の袋乾麺のヤツが食いたくなる事があるのです。 あれが多分「やきそば日和」。 違うか。 「人間、歳取ってくると牛肉よりは豚肉、そして鶏肉、やがて魚の方がよくなってくる。 それも道理の事で、本来自分が戦って倒せる動物じゃないと食えない様に出来ているのだ。 若く力のある時には牛と戦い勝って、その肉を切り取って食う事も出来るだろうが、歳を取ってくるとそうもいかなくなる。 その時には牛よりも小さい豚、その豚にも敵わなくなったら鶏、その鶏も捕まえる事が出来なくなったら、海岸に落ちている昆布だの貝だのを食うのだ」 本日テレビの「徹子の部屋」にゲストで出ていた中村メイコの旦那、神津善行が唱えている説だと言う。 ※実になるほどなあ、と思ったのであります。 太古の歴史から人類はそうして来ており、その遺伝子が今日までずっと残っているのでありましょう。 ちなみに、男の場合はそれで良いが、女の場合はどうするか言うと、そんな動物と戦って勝った男の所に行き、「そのお肉分けて下さらない?」と言ってくれたら食え、「あっち行けババア!」と言われたら、その次の段階の男の所へ行くのだそうなのであります。 これも、なるほどだなあ。 「一人の作家に半ダース以上の優れた探偵小説が書けるはずがない」 ヴァン・ダインが言ったと綾辻行人の「迷路館の殺人」に書いてあった。 ※ヴァン・ダインも綾辻行人もミステリー作家です。 ミステリーには優れた誰も考えつかなかった「トリック」が必要な事から、この様なセリフになるのですが、私は推理小説家でなく普通の作家でも、いや漫画家でも映画監督でも同様な事が言えると思います。 そしてまた、6つも優れた作品があるのなら、そのクリエイターはもう充分素晴らしいと思うのです。 「古来、迷路や迷宮は一種の魔除けの意図で作られることがあった。魔物は直線にしか飛べないと信じた古代中国人は、市街の城壁を二重にし、それぞれの門の位置をずらす事によって曲がりくねった小道を作った。 イギリスではある時代、魔女や悪魔の侵入を防ぐため、玄関のステップにラビリンスの模様が描かれた」 綾辻行人「迷路館の殺人」より。 ※よく放送局の内部が有事、テロリストや革命軍への対処のため迷路状になっていると聞きますが、あれは本当なのでしょうか。 単なる昔から言われてきている都市伝説なのかな。 「中国で基礎が確立された火薬はアラビア商人の手によって13世紀にイスラム諸国に伝わる。当時のイスラム諸国には火薬の知識はなかった。 それは、硝石の事をアラビア語で『中国の雪』と呼んでいた事からも分かる」 出典不明。 ※「中国の雪」とは何ともロマンチックなのであります。 「江戸時代の隅田川の花火大会。 花火舟だけでなく、餅や酒、あるいは冷やし瓜を売る小舟が数多くあり、これらの物売り舟を『うろうろ舟』と呼んだ」 出典不明。 ※今回ご紹介している名台詞は皆、私の2000・01年の日記からの抜粋なのですが、この時期、出典を書くのを忘れている事が多いのであります。申し訳ない。 民俗学では古来、海岸に漂着した不思議な物を「うつろ舟」と呼んだのですが、「うろうろ舟」ってのもあるのかぁ、と感心したのでした。 「人間は蛇嫌いとムカデ嫌いに大別できる。 蛇嫌いは『本来あるべきモノがない』事への不安であり、ムカデ嫌いは『必要以上にある』事への嫌悪である」 出典不明。 ※これに「転倒」を加えたのが、18世紀の博物学者ビュフォンが唱える「怪物の定義」なのであります。 興味のある方は、前に書いたエッセイ「過剰と欠如と転倒」を参照してみてください。 「あーあ。今日も家に帰ったら空爆かー」 今日、会社で仕事中、後輩のNがポツリと言ったセリフ。 昨日の午前1時過ぎからアメリカの「同時多発テロ」の報復として、アフガニスタンへの空爆が始まったのだが、それに対してのセリフである。 ※アメリカ同時多発テロは2001年9月11日の朝に起きた事件でした。 上記の様なセリフは、昔だったら筒井康隆あたりの小説にしか見かけなかったのですが、2000年前後は頻繁に日常テレビで空爆シーンが放送される様になったのでした・・・。 「羽があるから翔びたいなんて思うのよ・・・」 大学時代の友人M嬢のセリフ。 ※そういや昔「翔んだ女」「翔べない女」ってフレーズが流行っていた事がありましたっけ。 今回抜粋している日記の2000・01年には、私はすでに大学生ではありませんでしたが、昔の手紙を読み返して記したのであります。 大学時代を中心に、私の周囲にはこんな台詞を言う人がたくさんいたモノでした。 「また旅にでも出なくてはいけないのでしょう」 大学時代の友人Iのセリフ。 ※旅は若者の必携アイテムであります。 出不精の私でも、若い頃にはよく旅行したモノなのであります。 「悪い事して何が悪い」 吾妻ひでお。 その友人Iから貰った手紙の中に引用されていたセリフ。 ※吾妻ひでおは昔大好きだった漫画家でした。 上記の台詞は「悪い事しているから悪い」のですが、「それが何が悪い」と開き直っているのが面白いのであります。 「なあ、エンリコ。君はブーメランを売るのに儲からないワケを知っているかね?」 「いいえ。どうしてです?」 「投げたら必ず戻ってくるから一個しか売れない」 「サスペリア2」より。 ※「サスペリア2」はダリオ・アルジェント監督の私の好きなミステリー映画です。 当時(1978)は前年大ヒットした「サスペリア」の続編として公開されましたが、制作年は「サスペリア」より前で「続編」というのは配給会社が付いた方便なのでした。 「天使の羽根をもがれたから クリスマスソングは歌えない だけど来年には新しい羽根もはえてこよう 来年でだめなら再来年、再来年でだめならその次の年 五年でだめなら十年後、やっぱりわたしクリスマスソング歌いたい メリークリスマス アンド アイラブユー」 大島弓子「山羊の羊の駱駝の」より。 ※大島弓子の漫画も名台詞の宝庫であります。 私の好きな昔の少女漫画の多くは、羽根が生えてくるまでの、もがれた羽根が再生するまでを描いた物語でありました。 「1平方キロメートル内の人間を大量殺戮するためのコストは、大砲や戦車だと2000ドル、核兵器だと800ドル、サリンなどの神経ガスだと600ドル、それに対し、生物兵器はわずか1ドルだという」 出典不明。 ※物騒な話ですが、核兵器より戦車の方がコスト高、というのにちょっと驚いたのであります。 本当なのかしらん? とりあえず今回はここまで。 昔の日記からの抜粋なので、記述間違いや出典間違いがあるかも知れません。 その場合は、間違いを教えていただければ、これ幸いなのであります。 |
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