SYU'S WORKSHOP
ESSAY VOL.182
「続々絶対架空書籍案内」
について

(2019年12月21日)


今回は以前書いた「絶対架空書籍案内」と「続絶対架空書籍案内」の続々編なのであります。


私は眠れない夜、布団の中で鬱々と悶々と「こんな本が読みたいなあ」などと実際にはありもしない「架空書籍」を妄想して楽しんでいるのです。
どこにも無い本。
誰も書いていない、いや作者すら存在していない本。
当然、出版社だって存在していない本・・・。
そんな「架空の本」に、いかにもありそうな嘘の解説を加えた「絶対架空書籍案内」、その第三弾 宜しければ少しお付き合い下さい。



「初霜丸全記録」
君塚真人著。
ダライヤ新報。
昭和24年12月31日、定刻通り17時20分に青森桟橋を出港した青函連絡船「初霜丸」が4時間30分後、少し遅れて函館有川桟橋に到着した。
しかし その際、船員357名と乗客982名の全員が忽然と姿を消していた。
戦後最大のミステリーとされる「初霜丸事件」である。
函館署の入念な探索にも関わらす船内で見つかったのは、誰かのペットであろうか、一匹の栗鼠と二羽の鵞鳥だけだったという。
本著はレポライター「君塚真人」の約半世紀に渡る膨大な調査をまとめた一冊である。
君塚が出した、その恐ろしい結論とは?

「螺旋の流儀」
森岡万太郎著。
荒巻文化教育出版。
京都大学生命基準学の名誉顧問「森岡万太郎」医学博士による螺旋の流儀を解説しています。
何故人は生きているのか?何故人は死ぬのか?何故人は喉が渇くと水を飲むのか?
簡単な事を簡単に、難しい事をより難しく、判らない事をもっと判らなく。
それが生命基準学だと森岡博士は唱えます。
何故 人は歩く時、右足左足交互に前に出すのか?
あなたの全ての疑問に答えます。

「摩耶裏邪初期傑作選」
摩耶裏邪著。
木欄書房。
小説家「摩耶裏邪」の珠玉の初期短編7本、「狂人は心に」「同窓会」「死の舞踏」「絶滅鳥の詩」「ハローNO.9」「孤独人の夢」「計画倒れだ、俺」を収録。
実質の作家デビュー作となった「計画倒れだ、俺」は今読んでも多くの読者を魅了するだろう。
最近はラブコメ作家となっているが、本著のような初期の幻想小説に戻って欲しいと考えるのは私だけではないだろう。
「ネタがない?ふざけるな!お前も物を書く人間なら日常生活のあらゆるとこから、つまり普段の生活の中からネタを見つけて書けるようにならなくちゃいかんだろうが」。
「計画倒れだ、俺」より。

「日本旨味紀行83 新潟のらり餅」
唐橋マリン他著
日本旨味紀行振興会。
シリーズ累計300万部突破!
大人気のクッキング・ブックの最新刊です!
料理探求家「唐橋マリン」が日本の名餅100選にも選ばれた新潟県米置村の農家に代々伝わる「のらり餅」を紹介します。
感動的で歴史のあるその由来。信じられない意外な製造方法等々・・・。何もかも皆驚くべきものでした。
唐橋マリンは「お餅っていっても、みんなお米から作られるわけじゃないんですねえ!」。
写真47点、図説21点も合わせて収録。唐橋マリンによる可愛いイラスト68点も完全収録。

「鵺−ぬえぬま−沼 (完全復刻版)」
紀村龍雲著。
海王堂。
大正時代の絶対俳句の歌人「紀村龍雲」の代表作53編を集めた歌集、昭和8年刊行の完全復刻版です。
今では「真の。師たり死たり。ギヤルダ版より、師たり死たり。鵺沼の」を知らない方は日本人にはいないでしょう。
紀村は長野の木綿豆腐屋の三男坊として生まれ、大正12年9月1日上京しました。
奇しくも関東大震災が起こったのはその半時間後の事でした。
こうして紀村の数奇な人生が動き始めたのです。

「レニングラードの赤い魔女」
ニコライ・グレンコフ著。翻訳・黒縁徹也。
パンツァー・ファースト出版。
第二次世界大戦中、ドイツ軍はレニングラード(現サンクトペテルブルク)を900日に渡って包囲を続けた。
燃料や食糧の補給もないままレニングラードの人々は籠城を続けるしかなかった。
もはやこれまでかと思われた時、ひとつの工場からまだ塗装前の赤い戦車が包囲網から躍り出た。
搭乗していたのは学徒動員で戦車工場に駆り出されていた若い女子学生たち。
これが後に「レニングラードの赤い魔女」とドイツ軍に恐れられた彼女たちの初陣であった。
著者の「ニコライ・グレンコフ」は当時5人の魔女の最年少で操縦手を務めた「ナターシャ・グレンコフ」の末孫だという。

「星ふる夜に」
文・これお みれ。写真・工藤兼一。
クリスタル・レコード出版。
念法アイドル「これお みれ」の11回目のシングル「星ふる夜に」発売を記念して作られた写真集。
函館でパチリ。青森でパチリ。
仙台、東京でパチリパチリ。
静岡、大阪、神戸、福岡でパチリパチリパチリパチリ。
日本各地の港町で撮影された「これお みれ」の最新のポートレイトは、みんな同じ人物とは思えません!
もしかして、本当に違う?
いやいや、それぐらい様々な表情を持っているという証なのです!

「作為的虚偽本流」
朝日向尚著。
東経ミステリ新社。
昭和8年7月、九頭竜川の上流で一人の男が殺された。
職業は医師。
翌年、その下流5キロの地点で次の殺人事件が起こり、さらに翌年、再びそこから5キロ下流で次の殺人事件が起こった。
二番目も三番目も殺されたのは若い医師だった。
遺体の傍らには「R」と刺繍された白いハンカチーフ。
福井県警の定年間近の老刑事「笹塚泰造」と新米女刑事「戸目利みそか」は、捜査を続けて行くにつれ驚愕の事実を知る事となる。
「笹塚さんっ!」
それが戸目利が残した最後の言葉だった・・・。

「世界歴史暗号読本(下)」
鍵穴治郎著。
世界歴史社。
話題の「世界歴史暗号読本(上)」から早10年。「世界歴史暗号読本(下)」が発売されました。
第二次世界大戦中、BBCのラジオ放送でヴェルレーヌの「物憂くも単調に我が心を悩ませる」を使ってフランス国内のレジスタンスに連合軍のヨーロッパ上陸作戦を伝えたように、「暗号」は世界の重要な歴史を担ってきました。
そもそも第二次大戦でイギリスが勝利しドイツが負けたのも、複雑な暗号を作り解読するドイツの暗号機械「エニグマ」が、密かにイギリスに渡っていたからという説もあるのです。
前巻は太古の時代から第一次世界大戦までの暗号を紹介していましたが、今回は第二次世界大戦から現代までの暗号を紹介しています。
ところで私の持っている本の最後の数ページが乱暴に破り取られているのですが・・・なんてお遊びも入っています!

「海面水域」
海練森太郎著。
新見文芸。
昨年急逝した「海練森太郎」が34歳の時に僅か二日間で書き上げたという全4200ページに及ぶ異端のSF推理小説です。
東京湾で繁殖を続けるクズレモガナとは?
アイドルグループ「MAG2」がステージ開始直後忽然と消えたワケは?
埼玉県垂市に住む中年女性「本間峰子」が唱えるイイズラ教とは?
駿河湾沖50キロに誕生した「平成極楽島」とは?
日本各地に出没する12人の「黒卑弥呼様」とは?
全ての謎が次の謎を生み、それが最後見事に帰結していくさまは見事としか言いようがありません。
第28回大銀河賞受賞作品。TVアニメに続き来年秋実写映画化も決定しています。

「ロクちゃん!また明日(あった)!」
福森あい著。
ヘベロケディア。
緻密でどこか暖かい絵柄で知られる画家「福森あい」の二冊目の絵本です。
ロクちゃんは旅をしています。札幌から仙台へ。
ロクちゃんは旅をしています。静岡から沖縄へ。
ロクちゃんは旅をしています。日本からブラジルへ。
ロクちゃんは旅をしています。地球から火星へ。
あなたの心にも、優しさの炎を灯してみませんか?

「ク・リュクネ −青樹貴志幻想漫画短編集−」
青樹貴志著。解説・零十三。
銀星流クラウド。
「クトゥルー神話」の流れを組む表題作を初め、「うらがえった夜」「実質労働時間」「異国の丘」「壊れた夢のつなぎ方」「台風のおきみやげ」「いつか雨になる」「搬入前夜」の全8話を収録。
「怪しくって不思議に乾杯!
恐怖と怪奇という二つの言葉があって、同じような意味に聞こえるけれど、手許にある辞書を見ると、恐怖というのは『おそれること。こわがること』で、怪奇というのは『あやしくて不思議。実際にありそうもない』ということらしい」。
これは著者自身が「うらがえった夜」のあとがきに書いた言葉です。普段は寡黙な著者がここまで饒舌に語るのは珍しく、さらにこれからも「怪しくって不思議」を描いて行きたいと続けるのでした。



以上、12冊の「架空書籍案内」でした。

ここに書かれているのは全部嘘です。
多少似た話があったとしても全部嘘です。「架空書籍」です。
あしからず。

どれか読んでみたい本がありましたか?

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