SYU'S WORKSHOP
NOTES

モリアーティのアジト2製作記
蛇足だらけの注釈編



【犬島】
ロンドンを横断するテムズ河。
その東に「U字型」に大きく折れ曲がった場所がある。
その様子が「垂れ下がった犬の耳」に見えるところから「犬島(Isle of Dogs)」と呼ばれている。もちろん実際の「島」ではない。
ここを中心とした左右に伸びる一帯を「ドックランズ(Docklands)」と云い、19世紀には大型ドック、埠頭、造船所、倉庫などが密集した一大港湾地域であった。
現在は高層ビルが建ち並ぶ住宅&商業地区、ロンドンのウォーターフロントとして発展している。

「名探偵ホームズ」の劇中、ホームズはこの地域「犬島」で多発する「艦船部品盗難事件」から犯人のアジトを推測、特定した。
そこでは「張りぼてで作られた偽のゴミ回収船」の中に完成した潜航艇が隠されていたのだが、あれは単なる「テムズ河前線基地」で、建造はまた別の場所で行われたのだろう、と私は妄想。
今回のジオラマ製作に踏み切った。

それにしても「犬のホームズ」のアニメで「犬島」とは偶然ながらも実に面白い。
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【ワンダバ】
昔の傑作SF・TVドラマ「ウルトラセブン(1967〜68)」では毎回、「ウルトラ警備隊」の特殊大型戦闘機「ウルトラホーク1号」が、彼らの富士山中にある「秘密基地」から出撃する際、基地内の格納庫から滑り出した機体が、管制官の指示を受け、様々なエリアを通過、カタパルトまで達した後、やっとゲートが全開、空中へと勇ましく飛び立って行く・・・、その手順を丁寧に描写していたモノである。

それ以降の「ウルトラ防衛隊シリーズ」にもこの「システムチックな発進シーン」は踏襲され、その時にかかるBGMに「ワンダバダバダバ」と格好良い男性スキャットが入っていた事から、その曲は「ワンダバ」と呼ばれ、この手のSF戦闘メカが発進する時の「マニア推奨脳内認定イメージ曲」となった。
「怪獣とか宇宙人が突然街中に出現したってのに、一々そんな段階践んでちゃ出動まで時間かかり過ぎだろ」と思うのは、大人になった私の心が汚れチまったせいである。

これら「システマチックな発進シーン」は英国「ITC」制作のSF人形劇TVシリーズに、そのルーツを持つ。
いわゆる「海底大戦争 スティングレイ(1962)」「サンダーバード(1965)」等である。
日本でも東宝SF映画「海底軍艦(1963)」での「轟天号」の発進シーンはとても素晴らしく、今観ても私の琴線に触れる名場面となっている。
敵スパイによって半壊した「地下ドック」に注水を開始、ガレキを掻き分け進む、不退転の勇ましくも悲壮な出撃シーンである。

「システマチックな発進シーン」が英国で生まれ、日本へと継承されたというのも実に興味深く、納得出来る事実だ。
すなわち、日本は元より「見得を切る文化」を持っていたからである。
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【割り箸】
多くのモデラーやフルスクラッチャーにとって、割り箸の使用頻度は結構高い。
小さなパーツをエアブラシで塗装する際、ここに「両面テープ」を貼りパーツを固定し「持ち手」にするからである。
瓶詰めの「溶きパテ」を練ったり、先に「両面ガムテープ」を付けて手の届かない落ちたパーツを手繰り寄せる事も出来る。
何より凄いのは、これでご飯も食べられるのだ。
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【大脱走】
1963年のアメリカ映画。監督は「ジョン・スタージェス」。
第二次世界大戦中、ドイツの捕虜収容所から連合国の将兵たちが大量脱走する話である。
劇中、密かに掘られている脱出用トンネルの落盤を防ぐため、自分たちのベットから底板を外し、トンネル内の補強材として利用するエピソードが描かれていた。

今まで観た映画の中で「BEST1」を選ぶ時、私はいつもこれか黒澤明の「七人の侍」かで迷うのである。
ま、両方「同率一位」でも良いんだけども。
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【姿勢制御】
潜水艦の姿勢制御は主に艦内の「バラストタンク」や「ツリムタンク」をもって行う。
艦内各所にあるこれらのタンクに水を入れたり出したりする事で、船体のバランスを変えるのだ。
水を入れる時は単に「バラスト弁」を開け、周囲の海水を取り込むだけで良いのだが、水を出す時にはタンク内に圧縮ボンベから空気を注入し、溜まった海水を海中へと押し出すのである。

とは言え、このモリアーティの潜航艇、昔の旧日本海軍の「海龍」みたいな「有翼潜水艦」である様な気もするから、有翼潜水艦とは飛行機のフラップの様に潜水艦の「潜舵」「横舵」のコントロールで海中での姿勢を変える潜航艇なのだが、やっぱりボンベは作り過ぎた感じである。
第一、作ったボンベ大きすぎて、潜航艇の中に入らなかったし。
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【新しいシリコン型】
前に作ったドラム缶用の「シリコン型」と、今回作った「シリコン型」には大きな違いがある。

  

前の「シリコン型」が原型を、上下から全体を取り囲んでいたのに比べ、今回の「シリコン型」は原型をプラ板の上に軽く接着、単に周囲を取り囲んでいるだけなのだ。
何が違うかと言えば、「旧型」はドラム缶を全方向から「型取れる」のに対し、「新型」はドラム缶の底が「型取れない」事である。
「底」のディテールがない分「型取り→キャスト流し」が楽になるのだが、この型で複製したドラム缶は「必ず立てて置かなければ」ならない。底のディテールがまったくないからである。
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【あしからず】
「あしからず」ついでに、もう一つ「あしからず」を。
俺の製作記には前から「0,5ミリのプラ板」「1,2ミリの真鍮線」等の表記が出てくるが、正確には「0.5ミリのプラ板」「1.2ミリの真鍮線」である。
つまり「小数点」表記は「,コンマ」じゃなく「.ドット」が正しいのだ(小数点にコンマを使う国もある)。
ずいぶん前に間違いに気づいていたのだが、古い製作記を全部「,コンマ」から「.ドット」に直していくのも面倒臭く、「ウチの製作記の小数点はみんな,コンマだ!」と居直っていたのである。
昔から気になっている方には、あしからず。
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【スコットランドヤード】
1829年に創立された「ロンドン警視庁」の通称で、最初に建てられた場所が「スコットランド王離宮跡」であった事から、この名で呼ばれる様になった。
日本の警視庁を「桜田門」と呼ぶのと一緒である。
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【蓄音機】
蓄音機は1877年「トーマス・エジソン」によって発明されていたが、それはまだ「錫箔」を巻いた円筒に「記録された音」を再生するモノであった。
「円盤式」蓄音機が登場したのは1887年「エミール・ベルリナー」によってである。
正典「マザリンの宝石」(1903年の事件)では、ホームズが犯人を騙すトリックとして「始めて」蓄音機が登場する。
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【電話機】
電話機の発明者には諸説あるのだが、一般に知られているのは1876年「グラハム・ベル」とされている。
一番最初に電話機を伝わった記念すべきセリフは「ワトソン君、用事がある」というモノだったが、これは残念な事にホームズ物語とはまったく関係ない。
正典では「電報」が主な通信手段だった時代、「隠居した絵具屋」(1898年の事件)で始めて電話機が登場している。
そこから「ホームズが電話を引いたのは1898年以前だろう」とシャーロキアンたちは邪推している。
他に2つ「三人ガリデブ」(1902年の事件)「高名な依頼人」(1907年の事件)にも電話機が出てくる。
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【レコード盤】
最初に円形レコード盤を作ったのは1887年「エミール・ベルナリー」だと書いた。
この「レコード盤」の登場により、原盤からの複製が楽になり、何より収納が便利になった。収納が便利になったと言う事は「コレクション出来る様になった」と言う事だ。
自らヴァイオリンの名手で、事件が解決する度にオペラや音楽会に出かけていた音楽好きのホームズは、このレコード盤をどう思っていたのだろうか?
「演奏が何回でも好きな時に再現出来るってのは素晴らしい発明品だと思うよ。でも、これを聴いた後でシンプソンズで美味しいローストビーフを食べようって気にはならないよね、ワトスン?」。
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【天井クレーン】
工場内で見られるのが「天井クレーン」で、AFVモデラーにとっては「戦車工場ジオラマ」でお馴染みのクレーンである。



それぞれ、
A)クレーンガーダ。天井に架かった巨大なレール。
B)クラブトロリ。レールを左右に移動。
C)フックブロック。フック基部。
D)横行ドラム。横移動とフック上下を補佐。
と呼ばれている。
多分。
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【漫画本】
「小さな依頼人」の中で「トッド」が「偽コイン製造機」の前で読んでいた漫画本は「COMICS 5」、つまり「5巻目」である。
せっかくなので、本スクラッチでは「3巻〜14巻」を作ってみた。
何故「1巻」「2巻」が無いかと言うと、「トッド」が誰かに貸したまま、無くなっちゃったのだろう。
だし、この漫画を楽しみにずっと買い揃えていたのも「トッド」じゃなく「スマイリー」の方なのだろう。
などと、妄想に妄想を重ねてみた。
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【東映動画の悪者3人組の系譜】
「名探偵ホームズ」の「モリアーティ教授」「トッド」「スマイリー」の原型は、大昔の東映動画の白黒TVアニメ「ハッスルパンチ(1965〜66)」の「ガリガリ博士」「ブラック」「ヌー」にある事は前にも書いた。
しかし、このパターンは他の昔の東映動画にもよく見られた事である。
例えば「どうぶつ宝島(1971)」の「シルバー船長」「男爵」「オットー」の3人にも、「リーダー」「狡賢い腹心」「気の優しいヤツ」の図式があった。
また「長靴をはいた猫(1969年)」で「ペロ」をつけ狙う暗殺猫3匹も、このパターンを踏襲している。
さらに遡れば、「少年ジャックと魔法使い(1967)」の魔女「グレンデル」「キキー」「シバリ」、もっともっと遡れば、「少年猿飛佐助(1959)」の山賊「山嵐の権九郎」「おけらの金太」「ばったの三次」にも、この「悪者3人組の系譜」が見られると思う。
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【猫】
「名探偵ホームズ」の「小さな依頼人」の中で、ホームズを訪ねて来た小さな女の子。
彼女は「ミセス・ホリィを探して欲しい」と捜査依頼をする。
その「ミセス・ホリィ」は実は左耳に焼け焦げのある、太った野良猫なのだった。
行方不明になっていた野良猫は、物語の最後に子猫を連れ(彼女は何処かで出産していたのだ!)裏道を横切って登場する。
このシーンは「名探偵ホームズ」のオープニングにも登場する「名場面」で、俺は本ジオラマでも彼女をどっかに置きたかったのである。ぐすん。
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【潜航艇の設計図】
「モリアーティの潜航艇」は、ロンドン犬島周辺の幾つかの造船所から盗み出された部品で出来ている。
つまり盗み出した犯人、教授によって設計図が描かれているハズなのだ。
と言うワケで、アニメには出てこないが本ジオラマでは「潜航艇の設計図」は重要なアイテムである。
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私の勘違いや記述ミス、間違い等がありましたら、ぜひとも教えていただけると嬉しいのであります。

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